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Autor del artículo

Hidemi Yamamoto
山本秀実
フラメンコ舞踊家
京都スペイン文化協会理事長
フラメンコ舞踊家として、京都・大阪・滋賀・東京でフラメンコを指導しながらスペイン人アーティストや邦楽との競演による作品等、意欲的に公演活動を行う。
また 京都スペイン文化協会では、スペインの普段着の文化の紹介として、ラテン文化との交流や講演会、スペインツアーなどを企画。

2010年 マドリッド滞在記~変わりつつあるスペイン

2010年8月

 6月のスペインといえど世界的異常気象の影響か雷雨が続く、この夏マドリッドは断水の発表はないだろうとの予想。  失業率は20%を超え7月から消費税の引き上げ、経済危機(crisis)が騒がれる中、人々の暮らしはあまり変わらないように見える。日曜日には家族で散歩し、レティーロ公園ではローラースケートを楽しむ姿も多い。が、一旦就職すれば安泰という神話は崩れつつあるようだ。

 宵越しの金は持たない(持てない性分?)人々が貯金を始めたというウワサもある。ここスペインでは、老後は仕事をスパッとやめて楽しく年金生活を送ることが普通だが、その年金受給が60才から65才になった。67才法案は否決されたが。

 少子化問題も深刻だ。若夫婦がようやく生活が安定しそろそろ子供をと思ったときには既に年を重ねてしまって授からず養子をとる人が増えている。養子は中国系の子も多い。目が離れていて鼻が低くてカワイイんだそうだ。養子の育て方はといえば、3才の時から“あなたは養子で生みの親は別にいる”と教えるそうである。

 広く移民を受け入れているそうだが、少子化傾向のもう一つの原因は同性愛だとTVで報じていた。この時期同性愛者のお祭りがあり、グランビアはすごかった!!

 スペインらしからぬと思う問題は自殺者の増加。一昔前は失恋によるものと聞いていたが最近はうつ病によるものが多くなっているという。スペイン人は元来楽しく生きる才能があると思うが、意外とモロイ。クスリやアルコールから抜けられなくて破滅する人も多いと聞く。

 ある日路線バスに乗っていた時のこと、降りる合図ボタンを押し忘れたセニョーラが“降ろしてくれ!”と叫び “ボタンを押してない!”と扉を開けない運転手とのやりとりはすさまじかった。思いっきりセニョーラは悪態をついていた・・・。こういう光景は時々見る。

 大人しい人、気の弱い人もいるのだが、声の大きい人、激しい人が多くて目立ってしまう。

 とにかく アツイ、ハゲシイ。

 さて、スペインはサッカー大国である。テニスもF1もゴルフも盛んだが人々が熱狂するのはご存知のようにサッカー。

 サッカーの試合の日は大騒ぎである。車に旗、窓に旗、揃えのTシャツどころか旗を首に巻く、腰に巻く。ごく普通の光景らしく誰も振り返らない。試合の時間ともなるとバルのTV、家のTVの前に集合し応援、惜しい時は大きいタメ息が合唱のように聞こえ、一点入ればたとえどこにいようと人々の歓声で知ることができる。試合の日はたとえ金曜、土曜の夜でも街はゴーストタウンになり、買物はスムーズに出来るが、試合終了前に帰るようにしている。大きい試合に勝とうものなら若者が大騒ぎをしてコワイ。タクシーも拾えず徒歩で帰ったことがあるから。

 とにかく アツイ、ハゲシイ。

 2010年FIFAワールドカップが始まった。
独自の文化を持ち、分離独立の機運の高いカタルーニャなど、国内リーグにはアツク関心を示していたスペイン人だが、根深い「地域主義」を変えたのが、優勝した2年前の欧州選手権だった。代表チームによるこのFIFAワールドカップでも勝ち進むにつれ母国に対する愛と誇りが国民に一体感をもたらしていった。

 ワールドカップトーナメントを勝ち進む間にテニス界では全仏に続き全英でラファエル・ナダルが昨年の故障を克服しすばらしい成績で優勝した。テニス人口も多いらしいが人々はバルに集まって大騒ぎはしない。一方ワールドカップでは8強の時ですら金曜日の夜というのに街はゴーストタウンになった。レストランは売り上げが落ちる、たとえTVがあったとしても両手を使って食べるのでは試合に集中できないからである。

 4強が決まった後、私は帰国。私にはサッカーはあまりわからないが気になるのはその後の戦いぶりと人々の熱さ。日本のニュースでは試合や結果しかわからない。で、マドリー在住の友人から情報をもらう。

 決勝の日、街は砂漠と化しタブラオも休業した。延長後半のイニエスタのゴール、優勝が決まった時は人々の歓声で地鳴りがするようだったという。もちろん花火が上がり、家々の窓からは ¡Viva!の旗や幕、クラクションは鳴りっぱなし、老若男女問わず国旗色を身につけ大騒ぎ、噴水に飛び込むという有様だったとのこと。

 ゴールの瞬間ソフィア王妃は大きく両手を広げてバンザイしていた。瞬間最高視聴率90.3%を記録。そのイニエスタはゴールの直後ユニフォームを脱ぎ、下に白いシャツを着ていて、昨年イタリア遠征時26才で急性心不全により急死した親友に捧げるメッセージが書かれていた。試合中にユニフォームを脱いだことでイエローカードをもらったが・・・。

 それぞれの選手に、家族に、回りの人々に、たくさんのドラマがあった。(同じ日、日本では参院選とビミョーな大相撲名古屋場所が始まった。何と激しい7月11日)闘牛とフラメンコを思い起こさせる、“La Furia Roja”“赤い激情”という名のチーム名そのまま、攻める姿勢を貫き1スポーツがスペインを一つにした。

 “遊びの間に仕事をする”と言われるスペイン人だが、たゆまぬ努力、苦難を乗り越え、諦めず攻めて戦い抜くすばらしさを世界に示せたことが、国民に誇りと勇気を与えた。またこのことによる経済効果も大きく期待されている。

 長期化する深刻な世界的不況が、いくらワールドカップとはいえ、スポーツの勝敗で左右されるとは思えない。が、スペイン人なら、精神的な高揚感を本当のエネルギーにして、乗り越えてしまうかも知れない。

 そんな気にさせられた、2010年初夏のマドリッド滞在だった。

山本秀実


Plaza de las Ventas, Madrid



Plaza de la Cibeles, Madrid