Autor del artículo

Masao Kuwabara
桑原真夫
くわばらまさお
1977年よりほぼ毎年スペインを訪問。1984年から1989年まで銀行員としてマドリッドに駐在。ヨーロッパ在住約14年。 スペイン関係主要著書;『斜めから見たスペイン』(山手書房新社)、『それぞれのスペイン』[共編著](山手書房新社)、『スペインの素顔』(河出書房新社)、『スペインとは?』(沖積舎)、『ロサリア・デ・カストロという詩人』(沖積舎)、『我が母へ』(沖積舎)、『ガリシアの歌・上巻』(行路社)、『花へ』[写真詩集](山手書房新社)他多数。

マドリッドの夜(3)

 今回はもう一つのマドリッドの夜を紹介する予定であったが、多くの読者から第二号で約束した「カジノ必勝10カ条」を開示するようにとの要請があるので、ここに已む無く「10カ条」を披露することとする。尚、これは私の個人的なルーレットに勝つための10カ条であり、誰でもが勝てる法則ではないので念のため。

第1条:カジノを訪れるのは夜11時を過ぎてから。(それまでは冷やかしの観光客が多く、落ち着いて賭け事ができない。11時ころを過ぎるとプロの方々やカジノを真剣にやる真面目なお客が大勢となる)

第2条:受付をすますとトイレに立ち寄ること。(身だしなみを整え、気持ちの整理をする)

第3条:ルーレットの台を確認する。どの台に一番流れができているか。ゼロが一度でも出ている台は敬遠する。

第4条:女・老人の多い台は敬遠すること。(賭け事に最も向かない人種は女と老人。横に彼ら彼女らがくると集中力やツキが逃げてしまう)

第5条:台が決まったら座る場所を確保する。(立ったままでやると疲れる。短期決戦の集中力の勝負のため、精神力と体力の勝負になる)

第6条:23(赤)を中心に流れを読む。(ここのところは個人的なノーハウ、奥義につき詳しくは語れない)

第7条:流れがきたら一気呵成に攻める。(一瞬の躊躇が挫折を呼ぶ)

第8条:どんな賭け事も必ず潮目の変化がある。潮目を感じたらすぐに席を立つ。またデイーラーが代わった場合も席を立つ。

第9条:最長でも1時間以上はカジノにいない。飽くまで短期決戦と心得る。(カジノは長くいればいるほど餌食になるようにできている)

第10条:どんな小額でも勝った場合は現金に換えてわき目をふらずに出口に走る。(これができる人はもうプロ)

 私の経験からこれら10カ条がクリアできたときは100%勝っていた。第1条から第3条までは自分の意思の力で制御できるが、第4条5条は自分の意思ではどうしようもない面もある。自分が大勝していると回りに女・老人がたかってくることがよくある。そんなケースは一時避難するしかない。避難しているうちに自分のツキが逃げてしまっていることも度々である。

 上記の10カ条で一番難しいのは第10条である。どのカジノでもExchangeの場所は一番奥まった場所にある。ということは勝ったチップを現金に換えて出口に向かうとき、必ずさっきまで自分がいた賭場を通ることになる。するとついついポケットの現金に手がいってしまい「少しくらいつまみ食いをしてもいいだろう」という気持ちで、またルーレットに張ってしまう。もうツキも体力もなくなったところに現金を賭けると正に餌食になってしまう。そんな状況ではまず負ける。負けると熱くなる。今日はこれだけ勝っているのだからと、折角現金に換えた勝ち分をきれいにすってしまう。それどころか使ってはならない手元の大切なお金にまで手をつけ、結局は大敗して打ちひしがれて出口に向かうことになる。寄り道をしなければ堂々と勝者で帰れたのに!

 誰でも自分の好きな数字というものがあるが、私は基本的には23を中心に賭けた。あるときそろそろ23が出ると読んで手持ちのチップの全てを23に賭けたことがある。見事に的中して(配当は円貨にすると相当の高額であった!)その台を取り囲んでいたお客もやんややんやの大騒ぎとなった。私は彼ら一人一人と握手をしてその祝福に答えたのであった。

 また、たまに同じ数字が何回も続けて出ることがある。あるとき24に小額のチップをおいたところ、見事当たったのでそのままにしておいた。ところがまた24が出た。そこで36倍X2=72倍となった金額をまたもとの小額に変えて改めて24においた。ところがまた24が出た。そしてなんと次も24!合計4回続けて24が出たのであった。チップはそのままにしておいたら5回目はさすが違う数字が出て全部とられてしまった。最初においたチップを途中で減額せずにかつ4回目の24で引いていたら巨額の金額が懐に入ったのにと、あとで臍をかみながら逃げた魚の計算をしたのであった。

 また逆にどうしても自分のイメージどおりに数字が来ないツキに見放された日もよくある。そういったときは決して自分が決めた予算以上はやらない。これもセミプロの原則である。賭け事に弱いタイプは(1)お金持ちで、(2)プライドが高く、(3)自分は賭け事に強いと信じていて、(4)すぐかっとなる人々である。こういった種類の人間が毎夜毎夜カジノに押し寄せると、カジノのオーナーは笑いが止まらない。

 賭け事のついでにマドリッドでの麻雀について触れておく。いまやヨーロッパの大都市のどの町にも雀荘があり、しかも電動式の麻雀卓が完備している。私がマドリッドで麻雀をやったころはまだ手でかき回す古いタイプの卓であった。そのころのマドリッドには正式な雀荘がなく、中華料理店の一隅を借りて麻雀をやっていた。麻雀を始めると決まって徹夜となり、最後は(オーナーはとうに帰宅しているので)自分たちで店閉じまいをして早暁の街に出て行ったものである。

 これまでに数知れぬ回数の役満をやった私ではあるが、テンホー(親で配パイと同時にあがっている)をやったのは後にも先にもマドリッドだけである。このときのメンバーもよく覚えている。銀行員のYさんとTさん、商社マンのIさんであった。一生に一度できるかどうかと言われるテンホーである。案の定、私は翌日カステジャーナ大通りで交通事故にあったのであった。

(つづく)

桑原真夫