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Hitomi Asano
浅野ひとみ / あさのひとみ
東京都出身。
名古屋大学卒業、同大大学院、お茶の水女子大学大学院修了、人文科学博士。サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学留学。専門はキリスト教美術。
2000年より長崎純心大学准教授。
趣味は、トレッキング、ドライヴ。
サンティアゴ巡礼路、四国八十八ヶ所歩き巡礼挑戦中。

マジカル・ワールド・ガリシア!

2010年11月

 海に生きるガリシア人は、常に自然の脅威と隣り合わせで暮らしてきた。そのためか、キリスト教以前のアニミズムがいたるところに残っている。

 聖地、サント・アンドレ・デ・テイシードでは「生涯に一度は巡礼しなさい、もし叶わなければ、死んでから虫に姿を変えて行きなさい」と言われている。だから、年に一度の巡礼日に虫を殺してはならない。また、お墓から死者を連れてくる人もいて、「隣に誰もいないのに話しかけている人を見かけても変に思わないように」とも言う。

 カラフルなミーガは、嵐にあわないように、生涯食べものに困らないように、と何にでも効くお守りである。

 ガリシア人は石好きだ。先史時代のドルメンがそこここにあり、石にまつわる伝承も多い。たとえば、聖ヤコブが乗って来たという石は、現在もパドロン教会の祭壇下にある。ムシアでは聖母マリアが平たい大石に乗って海のかなたからやって来たとされる。大西洋の荒波がうちつけるムシアの浜には、それこそ、超常現象でもなければ集められないような大きな石がごろごろしている。聖母が乗って来た石のほかに、「腰痛が治る石」、「恋人たちの秘め事を成就させる石」などがあり、まじないが違和感なく、キリスト教と同居している。

 石が水に浮くというだけでも奇跡だが、聖人を運んで来た、という伝承は何を示すのだろうか。ガリシアは海に突き出ているので、妙ないでたちでわけのわからぬ言葉をしゃべる人たちが、ある日突然海のかなたから現れるというのは珍しくなかっただろう。しかも、カストロという石の円形集落が示すように、高い文明をもつ未知の国からの訪問者である。ガリシア人にとっての「海」は「宇宙」に等しかっただろう。宇宙人のもたらす新薬や技術は、ガリシアの人々の目には魔術のようにうつったのではないだろうか。

 変わって、現代、カトイラのバイキング祭りは、上陸した海賊が破壊の限りを尽くす野生回帰ロマンである。形は変われども、海からやってくる「不思議」にガリシア人の興味は尽きないようだ。

(文・写真 浅野ひとみ)

 


写真左サント・アンドレ・デ・テイシード 「ミーガ」



サンタ・テクラ 「カストロ」 紀元前1世紀頃



ムシア 「ビルヘン・デ・ラ・バルカ(舟の聖母)教会」



ムシア 「腰痛が治る石」 9回くぐらなくちゃ…



写真下 サント・アンドレ・デ・テイシード 「遠景」