Autor del artículo

Kazumi Uno
宇野和美
うのかずみ
1960年生まれ。東京外国語大学卒。
1999年より2年半、3人の子を伴いバルセロナ自治大学大学院に留学。
ミランフ洋書店(スペインの子どもの本専門ネット書店)http://www.miranfu.com店長。
イスパニカ通信添削講座講師。
児童文学中心に訳書多数。

cazuela

スペイン語圏 子どもの本めぐり(1)

 スペイン語圏のどのような児童文学が日本で翻訳出版されているかは、スペイン好き、本好きの方でも、案外知らないようです。日本で出版される年間1万点以上の本のうち、スペインの子どもの本はほんのひとにぎりなので無理もありません。

 しかし、それはもったいない話です。子どもの本を「お子様向け」とばかにすることなかれ。たくさん知識がない子どもにもわかるよう、作り手が心をくだいて作り上げた子どもの本には、大人の本にない間口の広さとわかりやすさ、親しみやすさがあります。また絵本には、スペイン人らしいセンスや美的感覚が生き、スペインの人々のようすや景色を目で見る楽しさもあります。40代以上の方は特に、自分が子どもの頃に読んだ本への先入観をいったん脇におき、今の児童書をぜひ手にとってみてほしいと思います。テーマも書き方も多様化し、思った以上に豊かな世界が開けているのがわかるはずです。

 連載第1回目の今回は、秋にちなんだ本、食べ物、スポーツ、読書、芸術にまつわる本をご紹介します。図書館や書店でさがしてみるもよし、だれかにプレゼントするもよし。これを機に手にしていただければうれしいです。

宇野和美


1. 『きみは太陽のようにきれいだよ』

チェマ・エラス作/ロサ・オスナ絵/福島麻紀訳/童話屋/2007年/1575円/小学生以上

敬老の日にぴったりの大人の絵本。おばあさんは、もう自分には似合わないとパーティーに行きたがりません。けれども、おじいさんは、「きみは太陽のようにきれいだよ」とおばあさんを説得。おばあさんは、とうとうおじいさんとパーティーへ! シャイで、素直に気持ちを伝えられない日本の男性の方々、奥さまへのプレゼントにもいかがですか?



2. 『はしれ!カボチャ』

エバ・メフト作/アンドレ・レトリア絵/宇野和美訳/小学館/2008年/1575円/幼児から

孫娘の結婚式へ出かけたおばあさん。行く途中でやりすごしたオオカミとクマとライオンに襲われないように、帰り道は大きなカボチャの中に入ってころがっていきます。ゴロロン、ゴロロン、カボチャよはしれ、はしれよカボチャ、ゴロゴンローン! ハロウィーンの季節に、言葉の繰り返しが楽しいポルトガルの昔話。著者はガリシアの人。



3. 『コドリーロのおやつ』

ロベルト・アリアーガ作/ちばみなこ絵/宇野和美訳/光村教育図書/2009年/1470円/幼児から

おなかのすいたワニの子コドリーロ。ところが、卵を抱いているママはかまってくれません。一人でおやつをさがしにいきますが……。日本人のイラストレータとスペインの人気作家のコラボレーション。くいしんぼうの子が喜びそう。親子で読むのにぴったりです。



4. 『めがねっこマノリート』

エルビラ・リンド作/E・ウルベルアーガ絵/とどろきしずか訳/小学館/2005年/1050円/小学校中学年から

マドリードの下町に住む8歳のマノリートは、自分ではそんなつもりはないのに、ママや先生に叱られてばかり。でも、おじいちゃんはいつも味方。そんな1年間をマノリート自身が語ります。クレヨンしんちゃんに通じる風刺とおかしみのある、スペインの子どもたちに大人気の作品。ユーモア感覚の違いも、スペインを知る読者には興味深いところです。



5. 『ラウルにあこがれて』

ホセ・マリア・プラサ作/金関あさ訳/穂高書店/2005年/本体1995円/小学校高学年から

ラファはマドリードに住む小学生。レアル・マドリードのスター選手ラウルにあこがれ、サッカーを通して成長していきます。ボールさえあれば、どこでもすぐサッカーが始まるスペイン。W杯優勝国スペインのサッカー文化に触れてみませんか?



6. 『ベラスケスの十字の謎』

エリアセル・カンシーノ作/宇野和美訳/徳間書店/2006年/1470円/中学生から

プラド美術館にあるベラスケスの最高傑作「ラス・メニーナス」。その右すみに描かれた小人ニコラスが、名画の2つの謎にフィクショナルなこたえを与える形で、ベラスケスの人となり、芸術観、当時の宮廷のようすに迫ります。大人にも読みごたえ十分のYA。



7. 『漂泊の王の伝説』

ラウラ・ガジェゴ・ガルシア作/松下直弘訳/偕成社/2008年/1575円/中学生から

うぬぼれの強い王子は、詩のコンクールで自分を破った絨毯織りに無理難題をつきつけます。ところが、それゆえ砂漠をさすらうことに。6世紀アラビアに実在の詩人をモデルにした壮大なファンタジー。ガジェゴ・ガルシアは、現代スペインのベストセラー作家です。



8. 『イスカンダルと伝説の庭園』

ジョアン・マヌエル・ジズベルト作/アルベルト・ウルディアレス絵/宇野和美訳/徳間書店/1999年/1365円/中学生から

舞台は中世のアラビア。世継ぎを持たない王は当代随一と言われる建築師に、この世に類のない庭園をつくらせます。ところが、庭園が完成したとき建築師を待っていたのは、ほうびではなく幽閉という仕打ちでした。建築師は王の陰謀にどう立ち向かうのでしょうか。イスラム建築とスペインのかかわりの深さを思わせる、詩情豊かな名作です。



9. 『まだ名前のない小さな本』

ホセ・アントニオ・ミリャン作/ペリーコ・パストール絵/安藤哲行訳/晶文社/2005年/1680円(絶版)/中学生から

主人公は、「むかしむかし」と「おしまい」の2行しかない小さな本。自分がなかなか大きくなれない理由を知ろうと旅に出ます。本の世界のしゃれたメタファーとしても読めるスペインのロングセラー。作者はEl País紙のコラムニストとしても知られる人気作家です。