Autor del artículo

Hiroshi Shiina
椎名浩
しいなひろし
1966年熊本市生まれ。中央大学大学院修了。熊本学園大学講師。

専攻: スペイン中・近世史。

共著: 『スペイン検定』(南雲堂フェニックス、2008年)、『スペイン文化事典』(丸善、2011年)。

論文: 「15世紀末のセビーリャにおける都市・王権関係の一側面」(『スペイン史研究』20号、2006年)、「16世紀スペイン語文書の日本記述における「権力・空間」   イメージについての一考察」(『イスパニア図書』11号、2008年)ほか。


日本・スペイン交流史

2011年02月

【編】坂東省次、川成洋
【発行】れんが書房新社
【価格】6,300円(税込)
【ISBN】 978-4-8462-0377-1
【仕様】A5判 532ページ 上製本 (2010年12月刊行)

ザビエルからコミック文化まで―『日本・スペイン交流史』の執筆にかかわって

 念願の『日本・スペイン交流史』が、昨年暮れようやく刊行の運びとなった。執筆者の一人として手前みそではあるが、本書の意義と意図、またこれからの課題といったことについて述べさせていただく。

 本書は「近世初期の交流史」と「幕末・明治以降の交流史」の二部構成になっている。第一部(全8章)が各章をおおむね時系列に配列しているのに対し、その倍以上の分量がある第二部(全20章)は分野別(芸術、外交、言語・文学、産業・情報、人物往来)に配されている。古い時代の話より現代に近い時代の記述の方が長く詳しくなるのは当然と言えばそうなのだが、両時代についての研究の蓄積をそのまま反映させれば、第一部、第二部のページ配分は逆転したものになったろう。

 別の言い方をすれば、第一部では、この時代に関わる豊かな研究成果を思い切って8章に圧縮し、日本人とスペイン人の最初の出会いを可能にした大きな時代状況と、それが最終的に関係途絶という結果に終わるまでの「流れ」が際立つよう心がけたつもりである。とくに重要なのは、16・17世紀に日本人が列島を越えて活動する空間と、スペイン人が半島を越えて活動する空間が、東・東南アジアの海域世界で重なっていたことである。時間枠としては、マニラを窓口に日西関係が本格化した1580年代より以前、ポルトガル人が種子島に来航した1543年から、1624年の徳川幕府とスペインの断交をへて、ポルトガルがオランダにとって代わられ、鎖国体制が完成する1640年前後までを展望した。

 これに対して第二部は、研究の蓄積の差に加え、「大航海時代」のような、両国が共有した歴史の舞台(ましてスペインはその“主役”の一人!)を見いだせないということが、作業を困難にさせた。そこで今回は、両国の接点をなるべく多く紹介し、本書を新たな「出発点」として今後の研究の深まりを期すことにした。そのおかげで、多様な読者のさまざまな角度からの興味にこたえられる構成にもなり、結果的には良かったと思う。

 もちろん課題は残る。歴史学ではむしろオーソドックスな分野と言われる政治・外交史もそのひとつで、1868年の国交回復から、研究者の関心が集中する内戦~大戦期の間の明治・大正期-その間、米西戦争(1898年)によりスペイン領フィリピンが消滅する―など、埋めるべき空白は多い。

 最後に、日本とスペインの交流史は、日本や日本人の姿、日本文化が―ときに多くの日本人の知らないところで―スペイン人に伝えられる歴史でもあることに、あらためて気づく。ザビエルら宣教師や航海士の記録しかり、19世紀バルセロナを中心にわき起こったジャポニスム、さらには昨今のコミック・アニメ人気しかりである。考えてみればそれは、16世紀初頭、マルコ・ポーロの「ジパング」がスペイン人航海士たちによって再認識されたことにさかのぼる。ちなみに本書の帯では、日西交流の歴史を「500年余」としている。「いや、1549年のザビエル来航にさかのぼっても460年余では?」と思われる向きもあろうが、それはこうした展望によるのであり、決して販促をねらった「キリのいい数」というわけではない。念のため!

椎名浩