スペインサッカー関連書籍のご紹介

2011年11月

 スペインのサッカーは現在世界を席巻していると言っても過言ではない。2010年のワールドカップ初制覇に続き、FCバルセロナが圧倒的な攻撃力で欧州チャンピオンに君臨している。名将モウリーニョ監督のもとレアル・マドリーもバルサに肉薄する勢いを見せている。彼らの活躍に比例してここ最近日本でも多くのスペインサッカー関連書籍を目にするようになってきた。その多くはバルサやレアル・マドリー、スペイン代表をテーマにしたものだが、サッカーの戦術や技術面ばかりでなく、文化や歴史、政治的観点から執筆されたものも少なくない。今回紹介しているのはそういった類の書籍である。

 スペインサッカーが好きな方にはぜひ読んでいただきたいのが『バルサとレアル スペインサッカー物語』である。バルサとレアル・マドリーのライバル関係だけでなく、バスクやアンダルシア、カタルーニャ、カスティージャなど、スペイン各地の状況を鋭い視点で考察している。他民族・多言語国家スペインの気質がどのようにサッカーの情熱へ昇華され、クラブ間の強烈なライバル意識につながっているのか、スペインのサッカーというより、むしろスペイン人の生き方について書かれた本であり興味深い内容である。

 その他でお勧めしたいのが『バルサ、バルサ、バルサ スペイン現代史とフットボール』である。スペインの現代史に暗い影を落とすフランコ独裁政権時代のことがメインに書かれており、バルサという存在がカタルーニャ地域で歴史的にどのような意味を持っているのかという視点で書かれており、地域密着の理念を掲げるJリーグや日本サッカーに様々なヒントを投げかけてくれる作品ではないだろうか。

 欧州だけでなく、他のスペイン語圏について書かれた作品も少し紹介する。『熱病フットボール』という書の中に、南米のウルグアイについて書かれている章があるが、ウルグアイ人の国民性とサッカーのつながりという一見マニアックともとれる内容である。あまり知られてないかもしれないが、ウルグアイは19.0年の第1回ワールドカップの開催国であり優勝国である。つまり言い換えるならばワールドカップの母国である。そして2030年のワールドカップ開催を目指している国でもある。2030年はワールドカップ100周年にあたる記念の年であり、加えてウルグアイがスペインから独立して200周年にあたる記念の年でもある。開催が実現するか否かは未知数だが、2030年に向けて当書籍でウルグアイという国を予習しておくのはいささか興味深いことではないだろうか。

 サッカーというスポーツは人間の歴史の一つの営みであり、それを記した本は一種の歴史小説のようなものである。現在日本にはバルサやバレンシアのジュニア世代の育成を目的としたスクールが設置されているが、単なる技術や戦術ばかりの学習ではなく、ぜひ様々な関連書籍を通して、背景にある文化や気質、歴史を理解していただきたい。そして現地に赴いて多くの仲間とフットボール談義に華を咲かせて、様々な価値観の共有を通して、スペインサッカーの神髄を堪能していただきたい。