スペインと私を繋ぐ
架け橋となった音楽交流

2012年02月

 たとえ言葉が通じなくても、世界中どこへ行っても、「音楽」で人々は繋がることができます。これまでに、音楽関連の文通、留学や海外生活中に参加した音楽祭、ピアノ演奏ボランティア、インターナショナルなグループを作って各国の歌を歌うなど、私自身も音楽交流で世界中に多くの友達ができました。そして最近では、スペインと私の心の距離が、自分の音楽を通して以前より近くなったのです。

  趣味の一環として、私は作曲をしています。自分の音楽を一人でも多くの人に聞いてもらいたい、そして音楽を通して世界の人々と繋がりたいという思いから、今から3年ほど前、私は自分の音楽サイトをネット上に開設しました。

 ある日、私の曲を聞いてくれた20代のスペイン人青年から、一通のメッセージが届きました。それは、曲の感想のみが綴られた単純なメッセージではなく、当時彼が抱えていた心の悩み等が綴られたものでした。メッセージを読み進めていくうちに、彼はとても繊細な心の持ち主であることが伝わってきました。そんな辛い時、偶然私の音楽に出会ったようです。彼のメッセージには、こう書かれていました。

「あなたの曲Reminiscences(追憶)を聞いて、その瞬間私は失望感から解放されました。暗闇で閉ざされた私の心に、一筋の光が与えられたように思います」。

自分が作った曲が、国や人種の壁を越えて人の心の癒しになったことが、私は素直にとても嬉しかったです。それ以来、そのスペイン人青年と私の間に、少しずつ友情が芽生え始めました。私がスペインに興味を持ち始めた主な理由のひとつは、彼を含め、私の音楽を好んでくださる方々に、偶然スペイン人が多かったからです。

 2011年夏、創作活動のインスピレーションを得る旅、そして友達と再会するために、私はスペインへ行くことになりました。アンダルシア州の町、海に近い場所、ピアノがあることを条件に宿泊先を探したところ、私の滞在先はピカソの生誕地、マラガになりました。実は、この旅が始まる出発日の空港で、面白い出来事がありました。

「来週スペインにいるの?
それなら、僕はあなたに会いに行きます。」

このようなメッセージが、例のスペイン人青年から入ってきたのです。突拍子もないメッセージに最初はびっくりしましたが、これも旅の醍醐味です。何よりも、私の音楽を好きになってくれたファンに会えるのですから、うれしい限りです。

 国内の移動ですが、彼の飛行機の旅程は乗り継ぎを含めて約7時間。空港で実際に姿を見るまで半信半疑でしたが、例のスペイン人青年は長時間かけて、私に会いにマラガへ来てくれました。3年ほどのメールのやり取りを経て、初めてお互いに顔を合わせたのです。感じの良さそうな青年でほっとした私。現地の宿泊先で知り合ったスペイン人、フランス人、ドイツ人、中南米の人々にも声をかけ、皆で彼を歓迎しました。そして、町を皆で散歩したり、タパスを食べに行ったりなどして、マラガの夜を楽しみました。

 週末を使って、私に会いに来てくれた2日半という限られた時間。私たち二人はとにかくたくさん語り合い、音楽を楽しみ、笑って楽しく過ごしました。音楽、趣味、価値観など、お互いの共通点が多いと会話もはずみます。そして、なんといっても音楽交流がとても楽しかったです。宿泊先に隣接するレストランの奥のサロンにあるピアノを借り、彼と友達になるきっかけになった私のオリジナル曲を演奏しました。彼は私の演奏に聞き入っていました。初めて私にメッセージを書いた頃を、静かに思い出していたのかもしれません。この曲を彼の目の前で演奏できたことに、私は心から喜びを感じました。

 彼も私にジャズの演奏をプレゼントしてくれました。少ししかピアノを弾かないと言っていた彼ですが、これがまた上手くてびっくりです。ジャズは挑戦したことがなかったので、彼に少し教えてもらいながら、二人でアドリブ演奏を一緒に楽しみました。その後も、日本、スペイン、諸外国の曲等を演奏したり、歌ったりして存分に音楽を楽しみました。ピアノの音が外に漏れていたのか、音楽に誘われ、友達や見知らぬ人までが知らない間にサロンに集まり、ちょっとした即席コンサートになりました。音楽を通して皆がひとつになった、心温まる素敵なマラガでの音楽の夕べでした。

 スペイン人青年がマラガを去る日、お守りとして、祖母の手作りのフクロウと、元気がでる私のアート作品のポストカードをプレゼントしました。「彼の心が、いつも温かい光で満たされますように」と、願いをこめて。彼は、とても大切そうにプレゼントを受け取りました。わずか2日半とはいえ、やはり別れの時はお互いに寂しくなるものです。しかし、音楽を通して彼に出会えたことに、私は大きな喜びを感じました。

 音楽には本当に国境がないんだな、と度々感じさせられます。言葉も文化も異なる人々の心を一瞬で繋ぐことができるのですから、音楽の力は偉大です。今回も、音楽は世界の人々と私を繋いでくれました。そして、友情も深めてくれました。生かされていることに日々感謝し、これからも人々の心に届く曲を作っていきたいと思います。

文・写真提供 西中千春


『Freiheit』 by Chiharu
*Freiheit (フライハイト)とは、ドイツ語で「自由」の意味。



ラリオス通り(Calle Marqués de Larios)は、海辺の町らしい開放感溢れるマラガのメインストリートです。夜になると、地元ミュージシャンの歌あり・踊りありの楽しい演奏が、ほぼ毎日繰り広げられていました。



Chiharu en España



『Allegria』 by Chiharu  *Allegriaとはイタリア語で「喜び、楽しさ」の意味。