Autor del artículo

Yuji Shinoda
篠田有史
しのだゆうじ
1954年岐阜県生まれ。フォトジャーナリスト。
24歳の時の1年間世界一周の旅で、アンダルシアの小さな町Lojaと出会い、以後、ほぼ毎年通う。その他、スペイン語圏を中心に、庶民の生活を撮り続けている。

【写真展】 スペインの小さな町で(冨士フォトサロン)、遠い微笑・ニカラグア (〃)など。

【本】 「ドン・キホーテの世界をゆく」(論創社)「コロンブスの夢」(新潮社) 「リゴベルタの村」(講談社)などの写真を担当。

cazuela

エコ・エスパーニャ(その1)
「小さな村の大きな試み」

2012年08月

 アンダルシア地方のグラナダから西へ65キロほどのところに、リオフリオという小さな村がある。私が初めてこの村を訪れたのは、今から33年前のことである。同名の鉄道駅があり、その駅からのびる小道を下っていくと、泉があり、そこから流れる小川にそってさらに下ると集落がある。昔とたたずまいは多少変わったが、人口も村の規模もそんなに変わっていない。なぜ、ここで下車したのかは別の機会にすることにして、この村で新しく始まった、画期的な試みを紹介しよう。

 古くから、この村はマス料理で有名だった。シエラネバダ山系から湧き出る、冷たく豊富な水を利用して、マスを養殖し、その場で調理し提供していた。もちろん今も週末になると近隣の人々が家族連れでやってきては、小川で泳ぐマスを見てから、数件あるレストランでマス料理に舌鼓を打つ。

 新しく、といっても実はもう28年も前から、静かに画期的なプロジェクトは始まっていた。それは、チョウザメの養殖である。

 チョウザメは、本場ロシアでも乱獲により激減し、その卵・キャビアは、超高級食材になってしまった。それにより日本をはじめとして、世界各地でチョウザメの養殖が試みられている。が、ここリオフリオでは、チョウザメのエサにする草から自然の中で栽培し、排水も自然の浄化作用を利用するという、徹底したエコをモットーにしている。さらに、製品のキャビアにはスペイン産の岩塩のみで、一切保存料を使わないようにし、健康志向にも配慮している。

 チョウザメは、卵が採れるようになるまでに、17~18年もかかるため、最初のキャビアが採れたのは、ようやく11年前のことだった。かなりの歳月がかかったが、最近ではフランスやイギリスのテレビ局も取材に訪れるほどになった。リオフリオはマスではなくキャビアで有名な村へと変貌をとげつつある。

文・写真  篠田有史



卵の成長具合をチェックするために捕獲する



リオフリオには年中豊富な水が流れる



リオフリオのキャビア



最終段階の生け簀の中には、17才以上のチョウザメがいる



孵化後3ヶ月のチョウザメの子



生け簀で泳ぐ若いチョウザメ