Autor del artículo

Keishi Yasuda
安田 圭史  やすだけいし
1977年山口県出身。龍谷大学経済学部専任講師。
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会(CANELA)理事。
専攻はスペイン現代史。
著書に『インターネット対応学習プログラム付き スペイン語技能検定5級直前対策問題』(共著、南雲堂フェニックス)、『スペイン文化事典』(共著、丸善)、Japón y la Península Ibérica: cinco siglos de encuentros(共著、Satori Ediciones)など。

パンプローナの「肉食系」グルメ
―牛追いの街で牛肉を喰らう―

2012年11月

 スペイン北部、ピレネー山脈の西側にあるナバラ州は、豊かな食文化を持つことで知られている。州都のパンプローナは毎年7月に牛追い祭りが開かれることで世界的に有名であるが、それはまるでパンプローナの人々の「牛肉好き」を象徴しているようである。この街を歩いていると、"Asador"と書かれた「焼肉屋」を頻繁に目にする。「焼肉屋」といっても日本のものとは非常に異なり、大きな牛肉の塊を炭火で焼いてできた大ぶりなステーキ(chuletón)を塩だけでいただく。肉の焼き方も十分に焼くのではなく、レアが多い。極めてシンプルかつ豪快な食べ方であるが、これが実に美味しい。ワインの名産地としても知られるナバラ州では、焼肉を州特有の濃い目の赤ワインとともに食すのが一般的である。

 この地の伝統的な食事はこれだけでは終わらない。大量の牛肉を食べ終わると、決まって食後酒のパチャラン(pacharán)を飲む。この飲み物は、地元で採れるリンボクの実から作られる甘いリキュールで、アルコール度数は25%から30%ほどである。ワインの度数が約14%であることを踏まえると、ガツンとパンチの効いた「強い」酒であることは間違いない。現地の人々はこれをストレート、もしくは少量の氷を入れただけで飲む。寒さが厳しい冬場に飲むと体も温まり、格別の美味しさである。現地では家族や友人が集まる食事会が開かれると、人々は食後に会話を楽しみながら、パチャランを何杯もおかわりすることがよくある。パチャランは、既製品を飲むことがほとんどであるものの、より上質とされているのが、自家製のものである。筆者も両方飲んだ経験があるが、確かに自家製の方がより香り良く、何倍も美味しいと感じた。

 ただ日本でパチャランを目にすることは、残念ながら一部のスペイン料理店などを除いてほとんどない。日本で大規模に売り出されたとして人気を博すかは分からないが、アルコール度数が比較的高いため、評価が分かれる可能性が高いであろう。

 巨大な焼肉を喰らい、パチャランで締める。それは牛追い祭りに熱狂するパンプローナの民ならではの、まさに「肉食系」な生き方を表しているといえる。

文 写真 安田圭史




ナバラ州産のパチャラン"Baines"。
瓶のラベルにはリンボクの実が描かれている。



パンプローナの典型的な"Asador"にて。この量で1~2人前である。
付け合わせとしてナバラ州名産の赤ピーマンとポテトが添えてある。