Autor del artículo

Mizuki Kobayashi
小林みずき / こばやしみずき
早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了。
スペインの食と文化に魅せられ、アンダルシア地方を中心に、スペイン各地を渡り歩く。
ライター業を経て、2003年より、東京・高田馬場にて「スペイン・バルOlé」を経営。著書に「魅せる!フラメンコ・アイテム~カスタネットからマントンまで~」(パセオ)、共著に「南スペイン・アンダルシアの風景」(丸善ブックス)など。

美味いぞサンルーカル!!
~サンルーカル食巡り記~

2013年02月

● 縁あれど、縁遠かったサンルーカルの街

 今は去ること20年程前、初めて行ったスペインで、初めて自分で買ったスペインのワインがカディス産の白ワインだった。

 店を始めてから知ったのだが、この "Castillo de San Diego (カスティージョ・デ・サンディエゴ)"というワインは、サンルーカル・デ・バラメーダにある有名シェリー蔵のアントニオ・バルバディージョ社が、シェリー用の品種であるパロミノ種を用いて作ったという変わり種で、発売以来人気を得て、今では「アンダルシアで一番売れている白ワイン」らしい。

 そんな私が、興味を持ちつつも、なかなか足を運べないでいたのがサンルーカルだった。サンルーカルは、シェリーと同じ製法で作られるマンサニージャの産地として名高い。ヘレスのフィノより軽やかな口当たりで魚介類によく合う。是非、一度現地で飲んでみたいと常々思っていたのだが、そんな折、スペイン帰りの知人から「サンルーカルってイソギンチャク食べるんだよね」などという話を耳にした。そりゃあ、是非食べてみたい!

 そしてハブーゴのハモン工場の見学に行った際に、「あとはどこを回って帰るの?」という担当者に「サンルーカルとかかなあ…」と何気なくつぶやくと、「サンルーカル!絶対行くべきだよ!!あそこのトルティジータ・デ・ガンバスはめちゃくちゃうまいよ!」とご親切にも"一番おいしいトルティジータ・デ・ガンバスが食べられる"という店まで興奮した口調で教えてくれたので、そのままサンルーカルへと向かったのだった。


ボデガの街らしく、街中ではいたるところで
シェリー樽がディスプレイされている。


●サンルーカルの食は深し!

 街の中心にあるカビルド広場に面しているというその店に早速向かうと、なんと2週間の長期休暇中だった。残念だが、この広場の周りにはバルがひしめいていて、どこの黒板にも "Tortillita de gambas" の文字が躍っている。安くておいしそうな店を物色して、早速、マンサニージャと共に注文。果たして小皿にのって出てきたのは、どう見ても「小エビのかき揚げ」だった。ピコスが添えられているのがタパスらしさを醸し出しているが、さくっとした食感といい、まごうことなき、日本のかき揚げである。

 なんだか愉快な気分になった私は、酔った勢いで宿近くのバルに入った。ここでしか飲めない地酒のようなものが飲みたい、と言うと、店員が入り口近くの樽を指差し、「これは今年できたマンサニージャの新酒で、通常のシェリーみたいに酒精強化していないんだ。地元の人は皆、この時期、これを買って飲んでるよ」とサラダ油の入れ物のようなポリ容器を振ってみせた。試飲すると、シェリーのようなそうでないような生っぽい味わい。量り売りという面白さも相まって、つい2リットルも購入してしまった。

 翌日、もう一つの目的であるイソギンチャクを食べに繰り出したが、それらしきものが全然見当たらない。おまけに「イソギンチャク」というスペイン語が何だったかどうしても思い出せない。困った私は絵を描いて宿の爺さんに見せ、尋ねてみた。「海の幸の一種で、こんな形したやつなんだけど…」、「ああ、カラコール・デル・マールだな」

 ……が、やはりどこのバルで聞いてもないという。第一「カラコール」とは「かたつむり」のこと。イソギンチャクに殻などないし、何かがおかしい気がする…。悩んだ私は街の観光案内所で同じ絵を見せ、再度尋ねた。

「ああ、オルティギージャズね。バホ・デ・ギーア(グアダルキビール川の河口沿いに密集する海産物のレストラン街)で食べられるわよ」

 そうそう、オルティギージャスだよ!!と蘇った記憶に喜びながら小走りで向かうと、運良く覗いた1軒目で "Hay ortiguillas" の文字が飛び込んできた。出てきたのはフライにされた黒い物体。口に含むと一瞬サクッとしたあと、ぐにゃりという食感と共に磯の香りが口の中に広がった。まるで磯そのものをそのまま無理やり固めてフライにしたような、うまいともまずいとも言いがたい不思議な味だった(ちなみにカラコール・デル・マールとはやはり巻貝の一種だった。私、そこまで絵が下手かしら???)。


日本のかき揚げを彷彿させるトルティジータ・デ・ガンバス



くだんのオルティギージャス(イソギンチャク)のフライ。
盛り付けはなかなかおしゃれ!?


●モスト飲むならサンルーカル!!

 帰国後、苦労して持ち帰った生マンサニージャのボトルをカウンターに出すと、「何これ?油?」と皆、不審そうな顔。「これはマンサニージャの新酒で、日本じゃまず飲めない代物なんですよ!」ともったいぶって言うと、「確かに軽いけどシェリーっぽいね」、「シェリーのようなワインのような…でもうまい!」などと口々に感想を述べながら飲んでいた。

 スペインではワインの新酒(モスト)の方が有名だが、マンサニージャの新酒の方が断然いける。つまみも海の幸が豊富で文句なくうまい!ヘレスやカディスほどメジャーじゃないけど、サンルーカル、お勧めです!

文・写真 小林みずき


白ワインの銘柄名に使われたサンディエゴ城
(Castillo de San Diego)は、サンルーカルの街の高台、
製造元のアントニオ・バルバディージョ社の向かいにある