スペイン語事始

2013年05月

【著者】 浅香武和
【出版社】 同学社
【定価】 1,575円(税込)
【ISBN】 9784810202441

 今年は、慶長遣欧使節がスペインを訪れてから400年目です。また、「日本におけるスペイン年」と「スペインにおける日本年」の年でもあり、日西友好関係を記念して日本とスペインの両国ではさまざまな催しがあります。

 このような社会情勢のなかで出版された本書『スペイン語事始』は、わが国のスペイン語教育および学習の歴史をまとめたものです。日本人とスペイン語の出会いは、明治30(1897)年9月高等商業学校附属外国語学校の開校とともに始まり、東京外国語学校にスペイン語科が設けられてから連綿と続く教育の歴史があります。本書は官立の学校における教育史ではなく、民間人によるスペイン語教育の知られざる事実をとりあげたものです。

 江戸期にメキシコに漂流してスペイン語を学んだ阿波の漁民初太郎、お雇い外国人ビンダ先生、日本人最初のスペイン語会話書を著した神戸の片桐安吉、メキシコに移民した群馬下仁田出身の黛忠太郎、盛岡出身で日墨協働会社の照井亮次郎、日本殖民学校の酒井市郎、群馬県世良田出身の孤高のスペイン語辞書編纂者村岡玄、横浜のスペイン語教師リカルテと太田兼四郎をとりあげ、彼らがどのようにスペイン語と向き合ったのか述べたものです。

著者 浅香武和



アンダルシアの都市と田園

2013年05月

【著者】 陣内秀信+法政大学陣内研究室 : 編
【出版社】 鹿島出版会
【定価】 3,675円(税込)
【ISBN】 9784306045835



 スペインの中で最もスペインらしいところは、なんといってもアンダルシアである。

 さて、本書は、アンダルシアの二つの町、アルコス・デ・ラ・フロンテーラとカサレスの歴史的な成り立ち、都市形成と都市構成、住宅様式、住民性、都市と田園の関係などを6年間かけて現地調査した成果を発表したものである。

 アルコスは、アラブ・イスラーム的価値観と西欧的価値観が混合した建築が見られる。伝統的にアラブ・イスラーム都市では同族が一つの住宅で生活していたが、現在では非血族の複数家族が中庭を囲んで生活する集合住宅化している。また、アルコスの中庭的住宅は、セビージャの中庭とは異なり、プライバシーを尊重し、空間の閉鎖性を高めるようになっている。

 一方、カサレスは、高台にあるイスラームの要塞を頂点として、丘陵の谷間を縫うように住宅が隣接し、中庭的住宅ではない。かつては、近くの世界的なリゾート地であるコスタ・デル・ソルに出稼ぎに大挙して行き、過疎地となってしまったが、最近はヨーロッパ各地からやってくる「グリーン・ツーリズム」で賑いを見せている。

 また、住民の自宅に対する意識としては、アルコスの住民は自分の家に誇りを持っているが、カサレスの場合は、敷地の狭さからくるのだろうが、利便性に腐心しているようである。

 それにしても、建築や都市計画に特化したユニークなテーマの本である。

          

評者 川成洋



スペイン王権史

2013年05月

【著者】 川成洋/坂東省次/桑原真夫 著 
【出版社】 中央公論新社
【定価】 2,415円(税込)
【ISBN】 9784121100122



 スペインの王室は、国民にとても親しみを持たれている。現国王フアン・カルロス一世の人気の背景には、その人間味 ―― 決して平坦ではなかった彼の人生への共感があるのではないだろうか。王室の歴史とはすなわち国の歴史であることからも推察できるように、ここに至るまでには、スペイン王室も激動の波にさらされている。

 本書は、スペイン統一を果たしたカトリック両王の時代から、ハプスブルグ朝、ブルボン朝と継承されていく王権の流れを追いながら、各国王を中心とした人間模様を活写する。そこから「スペイン」という国の姿が浮き上がってくる、これまでになかった内容となっている。構成の点で特徴的なのは、共和制の時代と内戦、フランコ独裁時代が詳細に記されていることだ。この四十数年間は国王不在のため、一見、本書の主題である「王権史」とは離れるようだが、これらは、スペインの歴史において重大な意味を持つのみならず、フランコの死後、民主主義とともに確立された現王室を語る上でも、大いに生きてくるのである。

 複雑な歴史を扱っているにもかかわらず、明快な筆致で、大河小説のように興奮しながら一気に読み進むことができる、幅広い層にお薦めしたい1冊だ。

          

評者 下山静香