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プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光
飯尾由貴子(兵庫県立美術館)

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本展の特色

 プラド美術館は歴代スペイン国王のコレクションを核として1819年に開館した世界有数の美の殿堂として知られている。16世紀のカルロス1世(在位1516−1556)(=神聖ローマ皇帝カール5世)に始まる王室コレクションは、美術愛好家であった次代のフェリペ2世(在位1556—1598)によってその礎が作られ、さらにその孫でやはり美術に極めて高い関心を寄せたフェリペ4世(在位1621−1665)の熱心な蒐集により、質・量ともに優れたものとなった。このフェリペ4世の治世に、ティツィアーノやヴェロネーゼをはじめとする16世紀ヴェネツィア絵画、ルーベンス、ヴァン・ダイクなどの17世紀フランドル絵画、17世紀イタリア絵画等、当時の一級品がコレクションに加わったが、フェリペ4世のコレクションの質をさらに押し上げたのが彼の宮廷画家であったディエゴ・ベラスケス(1599−1660)の作品であった。このたびの「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」では、プラド美術館の誇るベラスケスの作品が初公開作品を含め7点出品される。日本国内で過去4回、プラド美術館の作品を紹介する展覧会が開催されているが、ベラスケスの作品がこれほど多く、しかも全身像を含む大型作品が出品されるのは初めてのことであり、これが本展最大の見どころといってよい。ベラスケスの作品だけでなく、リベーラやスルバランといったスペイン絵画の巨匠、ティツィアーノやルーベンス、クロード・ロランなどの傑作も綺羅星の如くリストに名を連ねており、これらの作品も必見であろう。

 展覧会は、このベラスケスの作品を軸に、フェリペ4世の治世下を中心とするスペイン宮廷をめぐる国際的なアート・シーンを再現しようとするもので、ベラスケスを含むスペイン、イタリア、フランドル、フランス、オランダの画家の作品61点と、美術に関する書籍9点の計70点が出品される。

 

Diego Velázquez, Adoración de los leyes magos 1619. Óleo sobre lienzo, 203 x 125 cm.
ディエゴ・ベラスケス《東方三博士の礼拝》1619年 マドリード、プラド美術館蔵
©Museo Nacional del Prado

 

ベラスケスとスペイン絵画の諸相

展覧会構成

 展覧会は「芸術」「知識」「神話」「宮廷」「風景」「静物」「宗教」という7つの章をもうけ、さらに、当時の芸術理論等を記した貴重な書籍資料を紹介するという構成をとっている。ベラスケスがこれらの主題をどのように解釈し、絵画化したのか、主題に対するアプローチにおけるその独創性を際立たせるべく、「静物」の章と書籍以外にベラスケスの作品が含まれている。ベラスケスの作品を他の画家─異なる国や流派─の作品の中で眺めたとき、その表現の特徴がおのずから明らかになるはずである。それゆえ、ベラスケスの各作品は展覧会の中で年代順の配列とはなっていないが、ベラスケスを核に17世紀に黄金時代を迎えたスペイン絵画の諸相を一望できる内容となっている。

 

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