マドリード料理教室体験記
渡辺万里 Mari Watanabe

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「アンドレスの料理クラスへ」

 私が初めてスペインに渡った、今から30年以上前のこと。マドリードには料理教室というものはほとんど存在しなかった。調理師学校ではなくて短期でも受講できるところ、資格に関係なく料理を習うところというと、昔風の小さな料理学校と、調理用品を売る店に併設された料理教室の二つだけ。言い換えれば「お金を払って料理を習いにでかけていく」という感覚そのものが、ほとんど存在しなかったわけだ。

 当時の私は、「そうか、家庭料理というのは母から娘へと家庭で受け継がれていくもので、わざわざ習いに行くものではないのだなあ」と感心していたけれど、料理だけでなく「趣味のためにお金を払って何かを習う」という場所そのものが、当時のスペインにはきわめて少なかったのだ。カルチャアスクールが群居する日本とは、随分事情が違う。

 ところが現在のマドリードには、以前よりずっと豊富に料理を学ぶためのチョイスがある。ネット上にも様々な広告や案内が載っている。値段も決して安くはない。50ユーロから90ユーロというのは、スペインの物価から換算すると、かなり高いと言っていいだろう。

 そして教室の内容も、バリエーションに富んでいる。タイ料理、日本料理、特に「簡単なスシ」というようなクラスが方々にある。ペルー料理からカップケーキのクラスまで、そのチョイスの幅の広さは驚くほどで、スペインの食シーンもここまで国際的になってきたのかと感慨を新たにしてしまう。

 そんななかで私は、ぜひ行ってみたい「キッチン・クラブ」という教室を見つけた。いかにも今人気のスクールらしく「タイ料理」から「日本料理」に至るまで様々なコースがあるなかで、一番人気のクラスのひとつが「アンドレスのスタジオ」というタイトルなのだ。かれこれ20年前から知っているシェフ、アンドレス・マドリガルの料理を習えるのなら、ぜひ参加したい。

 

 

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