HISTORIA DE LA TARACEA − タラセアの歴史 −

スペインには、中世に発達したタラセア(Taracea)と呼ばれる木の象嵌手法で制作された作品があり、中世に建てられた王宮や教会などには、天井、壁、扉などに幾何学模様の象嵌技法を駆使した建造物が存在しています。有名な物に、スペインのグラナダのアルハンブラ宮殿やエル・エスコリアルの王宮の天井や壁画があり、また、今は市民戦争で破壊されてしまいましたが、バルセロナのサクラダ・ファミリア教会に立派な象嵌技法をもちいた聖堂があったそうです。

スペインのタラセアはヨーロッパの木を使ったアートの技術に、アラブの伝統的に受け継がれてきた木に関するテクニック、そしてアフリカの美術感覚とテクニックが、独自に混ざり合って発達し、次第に幾何学模様のみならず、スペインの風景を表現した象嵌絵画もみうけられるようになりました。

時代の流れと共に木のスライスに使用する機械も進歩し、木をミリ単位の薄さにスライス出来るようになりました。そこからマーケッタリーと呼ばれる厚さ僅か0.75ミリの薄い木を着色して板に貼って絵を描く、切り絵のような技法が生まれました。本来、タラセアとマーケッタリーは異分野のアートですが、昨今は混同されることもあります。

タラセアには、沢山の木が用いられますが、木を輪切りにすると、変化に富んだ年輪と、天然の—主に茶色の濃淡色の―面が現れます。同じ木でも、切断位置や角度によりその木目や色合いは異なり、千差万別の木々の中から、作者の目を通して選びぬかれた木々を用いて制作されるので、象嵌という特殊な手法で描かれるにもかかわらず、絵の具を混ぜ合わせて、より深みのある色を作り出して描かれる絵画と同じ位の重厚な味わいをかもし出すことが出来るのです。

またタラセアは、厚さ約1センチの素材を必要な形に切り取って、組み合わせたり、埋め込んだり、嵌め込んだりする象嵌手法による創作絵画です。つまり、たとえ同じデッサンから制作されたタラセアでも、全く同じ作品は二作とない独自性に富んだ作品になります。

木の厚みが1センチあることで、木の質感や光沢、節、根の部分、虫食いの穴、など、木の味わいのある所を引き出し、鉋(カンナ)仕上げを行います。年輪や色調の変化など、木独特の美をとらえ、逆目などによる反射光の変化や、見る角度が変わる事で、光の当り方が異なって、微妙に絵の雰囲気が変わり、木々のもつ味わいが出てくる事を念頭において制作されています。

スペインでは木々の種類が少ないため、タラセアは今でも貴重品として扱われています。しかし、スペインの一般の人々にはタラセアと言う言葉を知らない人が多く、忘れ去られた存在となりつつあります。

私は、着色しない自然の木々を使用し、伝統的な象嵌手法に独自の工夫を加えてきました。長い年月をかけて外界と調和して生きてきた“あかし”を木目や節として内にやどす木。暖かい色艶と共に、厭きる事のない美を秘めてた木々達の静かな“いのち“を活かし、絵画タラセアとしてよみ返らせる創作活動を積み重ねて、今日にいたっています。

文 星野 尚

星野尚 《アルバイシン》

星野尚 《窓》

星野尚 《茶屋(京都)》

 

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