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『聖地サンティアゴへ、星の巡礼路を歩く』


戸谷美津子

聖地サンティアゴへ、星の巡礼路を歩く(KanKanTrip17)
戸谷美津子 著

■書肆侃侃房
■2017年6月刊
■定価1,600円+税

 acueductoの読者ならきっと、「ブエン・カミーノ」の意味をご存じでしょう。カミーノは「道」、ここではキリスト教の三大聖地のひとつ、サンティアゴ・デ・コンポステーラへ続く巡礼路を指しています。そこを歩く人々が交わす挨拶が「ブエン・カミーノ」、すなわち「良い旅を」です。

 2年前の春、フランスの西の端からサンティアゴまで、約800km40日間の徒歩の旅をしました。スペインの大地をただひたすら歩くだけのシンプルな旅がしたい。それが旅の動機です。一方、巡礼路を、キリスト教徒でもない私が一体どういう「心持ち」で歩けばいいのだろう? という思いを心の片隅に抱きました。が、それも旅の最初の頃、巡礼宿で聞いた言葉で払拭できました。曰く、「心を開いて旅をすれば、たくさんのことが入ってくる」「巡礼路でいちばん大切なのは、世界中から来た人と話をすること」。

目的地までは黄色い矢印とホタテ貝が導いてくれる

 野の花が咲き乱れる巡礼路には、多くの旅人が歩いていました。歩く理由も年齢も、1日に歩く距離も旅のスタイルも人それぞれ。高齢の一人旅、親子、カップル、元気にカッ飛ばしている人、足を痛めてゆっくり歩く人など……赤ちゃん連れの女性もいれば、「カミーノ・ラブ」と呼ばれるカップルが生まれたりもします。

春の巡礼路は菜の花が満開

 私たちの旅は早朝宿を出発し、1日20km前後を歩きます。宿に着いたらシャワーに洗濯。その後は町をぶらつきながらバルで喉をうるおしたり、レストランで「巡礼定食」を食べたり。時には宿で自炊をすることもありました。そして、夜9時にはベッドに入ります。

世界各国の巡礼者たちと夕べのひととき

 この本はそんな旅の日々を、そこを歩く様々な人たちとの出会いと別れ、再会に焦点を当てて書いています。毎日歩くだけの単純な日々。それが一生忘れられない感動の日々になったのは、スペインの春の景色の美しさはもちろん、そこで出会った人々との心温まる交流があったからです。

 食事や巡礼宿の料金、持ち物や歩く際のアドバイスなど、旅立つ時に役立つ情報も掲載しています。ちなみに一緒に歩いた夫は「次はぜひバルで地元の人たちと話したい」と、帰国後スペイン語の勉強を始め、半年後に単独スペイン旅行、1年後にはバレンシア短期留学の夢を果たしました。

 さぁ! あなたもぜひ、中世から続くこの巡礼路を歩いてみませんか? 季節は春が最高です! 「ブエン・カミーノ!」、どうぞ良い旅を!

戸谷 美津子(MITSUKO TOTANI)
1953年東京生まれ。明治大学文学部史学地理学科卒業。編集プロダクションを経てフリーのライターになる。旅、アウトドア、インタビューなどを中心に活動。趣味の山歩きでは国内はじめアジアの山、スイスアルプス、ヒマラヤなどに登る。時代小説のファンで眠る前の読書タイムが至福の時。合気道4段。

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