バスクの友情は一生もの
廣瀬花

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スペインバスク地方の街、ビルバオに住んでもうすぐ2年になります。
この地に住んで感じるのは人々の強い地元愛。
特に面白いと思うのがクアドリーリャ(Cuadrilla)と呼ばれる友達グループです。

 クアドリーリャは幼少期に一緒に遊ぶ近所の友達のグループのこと。歳を重ねてもお決まりのバルに集まったり、一緒に旅行に行ったりと関係がずっと続くのが面白いところです。バスクの人々は照れ屋で、初対面では少し素っ気ないと言われることもありますが、一度仲良くなるとそれはもう一生ものなのです。

 クアドリーリャは男女で分かれているものが多く、男子は毎週バルに集まりビルバオのサッカーチーム「アスレティック・ビルバオ」の話題で盛り上がります! 同性だけだから気兼ねなくいつまでも同じ話題で盛り上がれるのです。それに対して女性陣はカフェで世間話を楽しんだり、旅行の計画を立てたりと女性だけの時間を満喫。もちろん男女が混ざっているグループもありますが、バスクでは基本的に友達同士で出かけたり集まったりするのは男女別々のことが多い様な気がします。

 ピンチョス発祥の地でもあるバスク地方には、たくさんのピンチョスバルがあり、毎週木曜日はピンチョ・ポテといって友達とバルを梯子します。これもクアドリーリャの大事な集まりのひとつ。一人10ユーロずつ出し合って人数分の飲み物とピンチョスを注文し、足りなくなったらまたお金を出し合ってと梯子酒は朝まで続きます。男性陣はその日出し合ったお金がなくなるまで飲み続けますが、女性陣は余ったお金を貯めておいて年末のクアドリーリャディナーに使うなど、男女で性格の差が出るのが面白いです。
 日本でも山梨県では「無尽(むじん)」と呼ばれる友達グループを大切にする慣習があるようで、月一の「無尽」での集まりは第一優先事項だそうです。バスクの男性も、彼女とのデートよりもクアドリーリャとの予定を優先してしまうので、バスクの男性と付き合う際には友達優先が前提と理解してあげる必要があるでしょう。

 友達をずっと大切にするという習慣はとても良いなと思う反面、移住した身からすると少し寂しいなと思うこともありました。クアドリーリャは一度出来上がってしまうと他のグループと混ざったり新入りを迎えたりということはないので、バスクの友達と出かけようとしても「その日はクアドリーリャの友達と会うから」と断られてしまうこともしばしば。今では移住組の友達グループで集まり、私なりのクアドリーリャを持っていますが、友達作りには正直苦労しました。スペイン人は誰にでもオープンですぐに仲良くなれるというイメージがありますが、バスク地方は例外かも知れません。

 それでも、人生において重要な選択をする時には必ずクアドリーリャに相談したり、どんなに大きな喧嘩をしても仲直りをしたりとずっと人生を共有出来る仲間がいるというのはとても素晴らしいことだと思います。街を歩いていても、小さな子供たちのクアドリーリャや年配の方々のクアドリーリャなど様々な友達グループを見かけるのはとても微笑ましい光景です。このバスクの人々が持つ団結心が、地元サッカーチームに対する熱狂的な応援や、8月に開催される祭り「アステナグシア」での盛り上がりなど、多くを説明していると思います。

 美食の街や芸術の街として徐々に有名になって来ているビルバオですが、人々の性格や友達付き合いなどまだまだ興味深い文化がたくさんあります。バスク地方を訪れる際にはぜひ地元の人々の生活にも注目してみてもらいたいです。



廣瀬 花 / Hanna Hirose

早稲田大学を卒業後、スペイン人の彼とバスク地方のビルバオへと移住。現在はビルバオの雑誌社「BAO」で働いています。実家の北海道を思わせるビルバオの山々は、週末のハイキングやピクニックにもってこいです。www.baobilbao.com

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