4º 岡添将人(懐石レストラン「IZARIYA座屋」 )
中村美和

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スペインの各分野で活躍する日本人にインタビューするシリーズ第四弾。
今回は、マドリードに店舗を構える高知発の懐石料理店「IZARIYA座屋」のオーナーシェフの岡添将人さんにお話を伺った。

岡添将人|Masahito Okazoe
懐石レストラン「IZARIYA座屋」

オーナーシェフ
www.izariya.com

インタビュアー:中村美和 / Miwa Nakamura

TodoMadrid でインタビュー動画を配信中!

 

 高知、神戸、銀座に懐石料理店を持つ岡添将人さんが、4店目の出店地に選んだのはスペインのマドリードだった。「世界に出るならどこでやりたいかと考えた時に、『自分が食べに行きたいと思えるレストランが多くあるのは?』と考えて、当時はヨーロッパに興味があった」というが、さらにその中からスペインを選んだのは、自分と味覚が合うこと以外にも、スペイン語という言語も大きな要因だったという。

「スペイン語を習得すれば、スペイン語圏の20数ヶ国、南米も視野に入れることができると思った」。そして、「スペイン人の人の好さや、気候など、実際に調査を進めれば進めるほど、気に入った」と、マドリードでの開業を決意した。

 毎年多くのレストランが新しくオープンしては、消えていく、淘汰の激しい首都マドリードで、2014年10月のオープン以来、日本で味わうそのままの懐石料理が味わえるレストランとして、スペインのメディアや食通たちから高い評価を得続けている「IZARIYA MADRID」だが、それでも軌道に乗るまでは多くの苦難があったという。

「予定通りいかない。スムーズにいかない。もしかしたら僕の語学力のせいかもしれないけど。日本と圧倒的に違います」。

 そのため開店に向けた工事は思うように進まず、ガスや電気などの設備も不十分な状態で営業初日を迎えることになったが、それでもマドリードで2店舗目となる焼き鳥店「Torikey」のオープンも経て、「確実に1軒目より2軒目の方が、段取りが良くなっている。今回の店舗の改装工事もかなりスムーズだった。これは、いい人に出会えたというのが大きい」。スペインで今の成功に至るまでには、「あまりにもスムーズにいかないことのストレスを乗り越えられるか、それに耐えうる資本があるか、あとはどういう人と出会えるか」がとても重要だったと語った。

 苦闘の日々の一方で、スペインのワイン醸造家や料理人たちとの交流などから、得たこともある。スペインワインもその1つだ。「こっちに来て、ワインを飲む機会が圧倒的に増えた。近くにワイナリーもあるので、日本だったら蔵を訪ねて蔵元と話すのと一緒で、ワイナリーへ行って話をすると、距離感も縮まって、そこのワインが飲みたいと思うし、『じゃ今度、収穫を手伝ってみる?』というようなコミュニケーションが生まれるのも、スペインに住んでこそ」。和食に日本酒をペアリングするだけでなく、より美味しくなるのであれば、ワインやシェリーも積極的に合わせるようになったそうで、その経験は日本の店舗へフィードバックされている。

 また「最近、ある有名シェフが『魚の活き締めを教えてほしい』と持ちかけてきて、バレンシアまで行ってきました。教えた後、その魚を僕たちも買える? と聞いたら、もちろんと言われたので。そしたら、船に乗せられて。釣れなかったらどうすんだ、と……」ということもあったそう。幸いにも、無事に魚は釣れ、活き締めのレクチャーができたそうだが、日本の料理の高い技術は、スペインでも注目を集めていることがうかがえる。

 スペインの食材は豊富ではあるが、和食の食材として考えた場合に、日本のクオリティーに達していないものも多い。特に魚については「血抜きや神経抜きをするかどうかで、その後の熟成や旨みに変化があるので、とても重要」とのことだが、これだけ魚介が豊富なスペインでも、活き締めは一般には適用されていない。近年では「サシミ」や「タタキ」がレストランでも一般化したスペインでこれが普及すれば、料理界全体にとって大きな価値を生むに違いない。

「魚に限らず、こういう例は結構ある。こんな十分に発達した先進国の首都マドリードで、もっと言えばニューヨークでも、日本ではごく普通のサービスがない、ということもある。例えば日本のクオリティーのコンビニ」。日本の外に出てみれば、海外で高い価値を生み出せる日本の技術やサービスがまだまだあることに気づく、と岡添さんは語る。

「皆、海外進出に興味がないわけじゃないと思うんですよ。ただ、結局一歩の勇気があるかないか。意外と出てしまえば、成功する可能性もある。やれると思えば行くべきだと思います」。

 実際にその「一歩」を踏み出し、苦労を糧に、経験を重ねながら前進してきた岡添さんは、それでもチャレンジする価値があったと断言する。

 高知からスペインへ、さらに次のステージも視野に、彼の挑戦は続く。

 

高知名物の鰹のタタキは、マドリード座屋でも象徴的な一皿

職人の手仕事で魅せるカウンター席



中村 美和 / Miwa Nakamura

情報工学修士、日本での電機メーカー勤務を経て、2007年に渡西。マドリードにていくつかの企業のウェブシステム開発等に携わった後、CROSSMEDIA WORKS,S.L.を起業。
主に観光や食に関わるプロモーションや、雑誌、ガイドブック、テレビなどの取材コーディネイトの他、マドリード情報を発信するtodomadrid.infoなどを運営。
twitter : @n_miwa @spain_go

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