2º 宮海彦(シルク・ドゥ・ソレイユ 「TOTEM」)
中村美和

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スペインの各分野で活躍する日本人にインタビューするシリーズ第二弾。
今回は、マドリード公演を皮切りに、セビージャ、バルセロナなどスペイン各地で大好評公演中のシルク・ドゥ・ソレイユ「TOTEM」で、アクロバットチームのキャプテンを務める宮海彦さんに話を伺った。

宮海彦|Umihiko Miya
シルク・ドゥ・ソレイユ 「TOTEM」
アクロバットチームキャプテン

インタビュアー:中村美和 / Miwa Nakamura

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 カナダで生まれ、従来のサーカスの常識を覆す刺激的なショーを生み出してきたシルク・ドゥ・ソレイユ。この世界最高峰のサーカスに入団して8年、28カ国118名という多国籍な団員と共に、世界中を巡ってきた宮さんは、2004年から2006年までの2年間、海外青年協力隊としてパナマで活動していたという経歴をもち、スペインの現地報道でも、団員を代表して流暢なスペイン語でインタビューに応えていた。そもそも海外青年協力隊を選んだのは、それまで打ち込んできた体操に限界を感じたせいだった。高校時代、跳馬でインターハイを制した宮さんだったが、大学に入って「自分の才能では、オリンピックに手が届かない」と、目標を見失っていた。

「体操を辞めたら自分には何も残らないんだと思った。他に何ができるか分からなかった」という宮さんだが、そこで立ち止まることなく、だからこそ「じゃ、何かやってみよう」と、一歩を踏み出すことを選んだ。

「UFOキャッチャーのようにつまみあげられ、まったく知らないところにポトっと落とされたときに、そこで生きていく力があるのかな、と思ったんです」。その落とされた先がパナマで、それがスペイン語との出会いだった。

 海外青年協力隊への参加を決意した時点では、スペイン語はまったく喋れなかったという宮さん。

「パナマに赴任して1年半ほど経った頃には、『現地人並のスペイン語力』と言われるほどになりました。自分でも何故だか分からないけど、やっぱりスペイン語が身体に合ってるのかな」と言いつつも、「発音に関しては、バスの移動時間などにブツブツと繰り返し練習してましたね」と明かしてくれた。「音楽家やスポーツ選手は、頭で論理を理解するだけでなく、繰り返し訓練して身体に覚えさせる習慣が身についている」と言い、これは短期間で高い語学力を身につけたい人には大きなヒントかもしれない。

 協力隊としてパナマに派遣された宮さんは、精力的に村々を訪れては、学校の校庭の草っぱらで、子供たちに体操を教える日々を過ごした。不完全な環境で見せられる技は限られていたが、それでも体操というものを見たことがなかった子供たちは、体操を見せると本当に喜んでくれたという。オリンピックという目標にむかって一身に体操に打ち込み、越えられない壁を前に新たな道へと踏み出した彼が、「初めて、これでいいんだと思った」瞬間だった。そして、この時の「体操で人を喜ばせ、感動させる」という体験が、シルク・ドゥ・ソレイユ入団へと繋がっていく。

 8年間、世界を旅しながら舞台で縦横無尽に跳びまわってきた宮さんは、今年を最後にシルク・ドゥ・ソレイユの退団を決意している。今後については、「やりたいことはいっぱいある」。

 これまでの体験をまとめた本の執筆もそのひとつだ。「誰かが第一歩を踏み出せるよう、背中を押せる何かになればいいと思ってます」。それ以外にも、宮さんの頭の中には、いろいろな挑戦のアイディアがつまっているようだ。

 今後の活躍からも目が離せない。

 

人類の進化をテーマにした幻想的な舞台が繰り広げられる「TOTEM」。宮さんはこの日、人類の歴史に度々姿を現しては、進化を促す「クリスタルマン」を演じ、高い技術と存在感を示した。



中村 美和 / Miwa Nakamura

情報工学修士、日本での電機メーカー勤務を経て、2007年に渡西。マドリードにていくつかの企業のウェブシステム開発等に携わった後、CROSSMEDIA WORKS,S.L.を起業。
主に観光や食に関わるプロモーションや、雑誌、ガイドブック、テレビなどの取材コーディネイトの他、マドリード情報を発信するtodomadrid.infoなどを運営。
twitter : @n_miwa @spain_go

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