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acueducto 18 特集「サルバドール・ダリ」

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ダリ巡礼の旅 ~スペイン・カタルーニャ紀行~


諸橋英二

 そして、この要塞と生家の中間地点にダリ劇場美術館があります。同館はもともと劇場として建てられた建物で、ダリが15 歳のときに描いた印象派風の絵画2点を展示した思い出の場所でもあります。その後、ダリは当時のスペインの国家元首フランコ将軍に直談判してこの建物を入手し美術館に改装し、1974年ダリ劇場美術館として開館させたのでした。館内はまさに‘ダリワールド’。車内に雨が降るタクシー、リンカーンとガラの後ろ姿が二重像(ダブルイメージ)で見える大絵画、部屋全体が女性の顔にも見える「メイ・ウエストの部屋」などがあり、美術館というよりも体感型のアミューズメントパークといった施設です。その中でもダリの想いが強い作品が大広間の天井画です。バロック風の天井画はダリとガラが天に召されていく壮大な構図で、その隅には年老いたダリとガラが寄り添うように描かれています。しかし、晩年のダリとガラの関係は良好とは言えず、この美術館が開館した時もガラはこの天井画を見ること無く立ち去り、ダリは非常に寂しい思いをしたそうです。

 


お馴染みフィゲラスのダリ劇場美術館

ダリ劇場美術館の天井画。ダリに寄り添うガラ

 最後に訪れたのは愛妻ガラへ贈ったプボル城があるジローナです。このジローナは中世に栄えた町で、郊外には豪邸が点在しています。ダリは、その屋敷のひとつを買い取り大改修してガラへプレゼントしました。当時、ダリ65歳、ガラ74歳。建物は決して大きくはなく、建物の中も晩年のダリとガラを象徴するかのように地味な装飾です。地下室にはガラとダリの2 つの棺が並べられていますが、入っているのは先立ったガラだけ。ダリの遺体は前述のダリ劇場美術館のエントランスに埋葬されています。ガラはこのお城に若い男性2 人と同居し、ダリはこのお城の入口までしか入ることを許されなかったそうです。不可解な関係を象徴するかのような二つの棺の部屋は冷たく静かな空間でした。

 今回訪れたダリゆかりの地には、全てにおいてダリの作品同様、一度見たら忘れられないほどの強く不思議な印象がありました。それは長年変わらない風景であり、独特の文化をもつカタルーニャ地方の土壌にあるかもしれません。ダリはカタルーニャ人として誇りをもち、郷愁を誘う景色を生涯愛し続けました。ダリを生んだカタルーニャは、望郷の念を呼び起こしてくれる土地でした。

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