2019年05月
バルセロナ出身の奇才ハイメ・ロサレス監督作『ペトラは静かに対峙する』(原題:Petra)が、本年、日本に上陸。6月29日(土)より新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほか、全国で順次公開されます。関西の3都市(大阪・京都・神戸)でも8月上映予定。本作は2018年度カンヌ国際映画祭監督週間の正式出品作品。ある「真実」を追い求める主人公ペトラ(演:バルバラ・レニー)と、彼女が出会う人々の間で紡がれていくサスペンス。
陽光に溶けていく、偽りと真実
カタルーニャの乾いた大地で繰り広げられる、
舞台はカタルーニャ。若き画家ペトラは、作品制作のため、その道で大成し巨額の富を築いた老彫刻家ジャウメ(演:ジョアン・ボテイ)の邸宅を訪れます。けれども彼女の本当の目的は、ジャウメが自分の実の父親かどうかを確かめること。物語は彼女が邸宅に着いた初日の場面から始まります。家政婦テレサに迎え入れられた後、ジャウメの妻マリサ(演:マリサ・バレデス)と対面。
「アトリエでジャウメと作品制作をする」とマリサに挨拶するペトラ。突然の客に戸惑いながらも、ペトラを迎えるマリサ。
Mariza : ¿Qué buscas en el arte?
マリサ:芸術に何を求めるの?
Petra : La verdad.
ペトラ:真実。
Mariza : ¿La verdad? ¿Qué verdad?
マリサ:真実? どんな?
Petra : Una verdad.
ペトラ:”真実”としか。
「真実」は「偽り」と表裏一体で本作のキーワード。ペトラにとっては「真実」を明かすことが自らのルーツと直結します。創作活動の中で、一心不乱に巨大な「父」の肖像を画布に描き続ける主人公。果たして、ジャウメは本当に彼女の父親なのでしょうか。
ジャウメとマリサの息子ルカス(演:アレックス・ブレンデミュール)や、遂にジャウメ本人とも対面し、この一家との親交を深めていくペトラ。善良で薄幸であったり、あるいは、許しがたいほど残酷であったりするジャウメ家の人々。冷酷で権力を振りかざす家長の支配する敷地内で、ペトラは彼らと生活を共にするうち、当事者の1人として、逃れられない悲劇の連鎖へと巻き込まれていきます。悲劇の源にあるのは、寡黙な登場人物たちの仮面の下に徹底的に隠された本性と、「真実」。
透明感の溢れる風景が非常に美しく、それも本作の魅力の1つ。古き良き欧州の田園を連想させるような、陽光をいっぱいに浴びた黄金の草原を背景に繰り広げられる、静かなる惨禍。その縺れた人間模様はギリシャ悲劇を連想させますが、荒々しい激情描写は皆無。
だからこそ、人物たちが絶望に突き落とされた時、どこか遠い舞台から彼らの様子を眺めていたはずの観客は、なぜか自分自身の内部でその余波を受けます。音もなく、心を掴まれるような衝撃。
時系列にほどこされたある「仕掛け」も、観客との間に距離を生み出す章仕立て構成も、すべては監督の手腕で巧みに計算されたもの。映画の表現技法の底力を見せる怪作です。カタルーニャの美しき舞台で綾なす異彩なドラマを、皆さんもぜひスクリーンで堪能してください。
ペトラは静かに対峙する
原題:Petra|日本語字幕:伊藤美穂
監督・脚本:ハイメ・ロサレス
撮影監督:エレーヌ・ルヴァール
出演:バルバラ・レニー、アレックス・ブレンデミュール、ジョアン・ボテイ、マリサ・パレデス
2018年|スペイン、フランス、デンマーク|スペイン語、カタルーニャ語|107分|カラー|1:1.66|5.1ch|PG-12
©2018 FRESDEVAL FILMS, WANDA VISIÓN, OBERON CINEMATOGRÀFICA, LES PRODUCTIONS BALTHAZAR, SNOWGLOBE
配給・宣伝:サンリス
公式Facebook:@petra.movie
公式Twitter:@petra_movie
公式Instagram:@senlis_movie
6月29日(土)より新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
公式サイト(特典付前売り券情報もこちら)
映画部 | 株式会社サンリス
サンリスは、「人生を豊かにする」、「文化を発見する」、「平和を願う」、というメッセージ性や気付きのある作品を製作したい。また、世界中のあらゆる国から魅力溢れる作品を日本にお届けしたいと考えています。