スペインの老後の暮らし

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vol.3 高齢者集合住宅コンビビール


篠田有史

Residencial Convivir

 マドリードから南東へおよそ100km、車で約1時間。ラ・マンチャ地方の北の端の小さな村、オルカホ・デ・サンティアゴの村はずれに高齢者住宅「コンビビール」はある。今までに紹介した施設同様、組合形式の施設だが、コンビビールは介護施設の認定を受けている。

FOTOS = ©︎Yuji Shinoda

ホテルのような正面エントランスには、老人ホームのイメージはまったくない。裏には中庭や菜園が広がり、格好の散歩道がある
コンビビールは、畑や自然に囲まれた、鳥のさえずりが聞こえる静かな丘に建てられている
昼食時には、ほとんどの住民が1階の食堂に集まり一緒にテーブルを囲む。この日のメニューはスペインの典型的な家庭料理「マドリード風コシード」で、会話も弾む
ワンルームの部屋に1人で暮らす元書店員のカルメンさん(68)は、一緒に生きるという考えが気に入ってここに住むことを決めた

 スペインには、介護認定を受けた65歳以上の人が約91万人おり(2017年末時点)、介護が必要な人のおよそ1/4が、何のサービスも受けていない。リーマン・ショック後の緊縮財政で要介護の認定も厳しくなり、公的施設の数も人手も、日本同様にまったく足りていない。



篠田 有史 / Yuji Shinoda

1954年岐阜県生まれ。フォトジャーナリスト。24歳の時の1年間世界一周の旅で、アンダルシアの小さな町Lojaと出会い、以後、ほぼ毎年通う。その他、スペイン語圏を中心に、庶民の生活を撮り続けている。【写真展】冨士フォトサロンにて『スペインの小さな町で』、『遠い微笑・ニカラグア』など。【本】「ドン・キホーテの世界をゆく」(論創社)「コロンブスの夢」(新潮社)、「雇用なしで生きる」(岩波書店)などの写真を担当。

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