スペインの老後の暮らし

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vol.2 高齢者集合住宅トラベンソル


篠田有史

Residencial Trabensol

 マドリードから北へ車で1時間(約60km)ほど走ったところにあるトレモチャ・デ・ハラマという小さな村(人口約1,000人)の郊外に、その施設はある。まわりは、遠くに低くなだらかな山々が見えるだけのほぼ真っ平らな土地である。

FOTOS = ©︎Yuji Shinoda

トラベンソルの正面。すべての建物は繋がっていて、外に出ることなくあらゆる部屋やホールに行ける
ベランダは南向きにあり、中庭の庭園が見えるようになっている

 1992年、スペインでオリンピックと万国博覧会が開かれた年、マドリードから近い所に、将来自分たちが住むべき共同住宅を建てることを考え始めた人たちがいた。彼らは、2002年、まず住宅協同組合を立ち上げた。そしてトレモチャ・デ・ハラマに理想的な土地を見つけた。その土地の購入と住宅建設・維持のために組合員一世帯につき約1,900万円を出資し、54世帯で総額およそ10億2,000万円を集め投資して、2013年に「トラベンソル(Trabensol)」を完成させた。

棟ごとに廊下の壁の色が違い、間違えることはない
すべての部屋は南側に大きなガラス戸が配置され、室内は明るい


篠田 有史 / Yuji Shinoda

1954年岐阜県生まれ。フォトジャーナリスト。24歳の時の1年間世界一周の旅で、アンダルシアの小さな町Lojaと出会い、以後、ほぼ毎年通う。その他、スペイン語圏を中心に、庶民の生活を撮り続けている。【写真展】冨士フォトサロンにて『スペインの小さな町で』、『遠い微笑・ニカラグア』など。【本】「ドン・キホーテの世界をゆく」(論創社)「コロンブスの夢」(新潮社)、「雇用なしで生きる」(岩波書店)などの写真を担当。

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