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Eco España vol.14 障がい者たちが作る美味しいヨーグルト「La Fageda」


篠田有史

「La Fageda」へ続くブナの森の小道

 バルセロナから北へ1時間半ほど車を飛ばし、さらに道路をそれて、自然保護区の鬱蒼と茂るブナの森の小道を5分ほど行くと視界が開ける。ここに障がい者たちの働くヨーグルト工場「La Fageda(ブナの森の意)」がある。

中央の広場。工場に併設してショップやカフェもある

 1982年、心理療法士のクリストバル・コロンと精神科医のジョセップ・トレルが、障がい者に働く場所を提供するために、労働者協同組合として設立した。はじめ市長は、ばかげたことだと場所の提供を拒否したが、コロンは障がい者も、役に立つ労働によって喜びや生きがいを得るべきだ、と説得し実現にこぎつけた。

La Fageda」では現在300頭の牛が飼育されている。牛たちは牛舎でクラシック音楽を聴きながら、とれたての草を食む。牧場とヨーグルト工場は同じ敷地内にあり、搾乳所とヨーグルト工場は直接パイプで繋がっている。牛乳は新鮮なままヨーグルトになる。

牛舎に隣接する搾乳場

La Fageda」全体の労働者は300人以上。そのうち、障がい者は130人いる。主な障がいは、発達障がいや知的障がいなどの精神障がいで、彼らを支援するための社会福祉士や心理療法士なども常駐している。大半の障がい者は家族と暮らしていて、組合の住宅に暮らす人もいる。朝夕の通勤は専用のバスが送り迎えをしてくれる。

マドリードへの出荷分のために、カスティーリャ語表記のラベルを貼る

作業は、できる人だけがする。無理はしない

クリーンルームでの箱詰め作業

昼食は障がい者もサポートする職員も一緒に

 見学者も受け入れていて、平日には学校の生徒たちが、週末には家族連れが大勢やってくる。

 ここで作られるヨーグルトは、一般のものより濃厚で深い風味があり、掛け値なく美味しい。基本的にカタルーニャ州内でしか手に入らないのが残念だ。バルセロナへ行かれたら是非、食べてみて欲しい。普通のスーパーで売っている。

音楽を聞きながらエサを食む牛たち

fotos ©︎Yuji Shinoda



篠田 有史 / Yuji Shinoda

1954年岐阜県生まれ。フォトジャーナリスト。24歳の時の1年間世界一周の旅で、アンダルシアの小さな町Lojaと出会い、以後、ほぼ毎年通う。その他、スペイン語圏を中心に、庶民の生活を撮り続けている。【写真展】冨士フォトサロンにて『スペインの小さな町で』、『遠い微笑・ニカラグア』など。【本】「ドン・キホーテの世界をゆく」(論創社)「コロンブスの夢」(新潮社)、「雇用なしで生きる」(岩波書店)などの写真を担当。

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