2016年02月
有機農園「ラ・レベルデ」で買い物をするひと
スペイン南部、アンダルシア地方の西部にヘレス・デ・ラ・フロンテーラという街がある。シェリー(ヘレス)酒の産地として有名だが、フラメンコ・ファンにとっては「フラメンコ揺籃の地」としての方がわかりやすいかもしれない。ここで2007年、「ソキート(ZOQUITO)」という地域通貨が生まれた。地域通貨とは、特定の地域やコミュニティだけで使用できる通貨で、地域の人たちの相互扶助の一環として一時期日本でも流行りかけた。
ソキートが使えるのは、「ラ・レベルデ」という有機農園の販売所やソキートが開催するミニマーケットなどとソキートの会員間などだ。
有機農園「ラ・レベルデ」の販売所
有機農園「ラ・レベルデ」の販売所は、街の郊外の未舗装の道を少し入った農地の中にある。「ラ・レベルデ」では、会員が共同で2ヘクタールの土地を借りて、人を雇って有機農法で野菜を作り、販売している。非会員でも購入は可能だ。
ミニマーケットは、いわゆるリサイクル市で毎月2回ほど行なわれている。場所は会員のガレージなどだ。マーケットをのぞいてみた。中央におかれたテーブルに、会員が持ち寄った電化製品から衣料品、食品から自家製のワインまでさまざまなものが並ぶ。それらを買うためには、ソキートの手帳に売り手と買い手が互いに日付と品名、値段、残高を書き込み、サインをする。こうしておけば、どちらかが手帳をなくしても記録は残る。
ソキートの手帳(上)と ソキートに記入する人々(下)
実は、このソキートを作ったのは飯塚真紀さん(43)という日本人である。現在、ソキートの会員は100名ほど、爆発的に広まっているとはいえないが、8年以上続いているのは、資本主義に依存しない生き方を探る人たちの絆の強さだろう。なにかにつけて集まって会話を楽しむことが好きなスペイン人には、うってつけなのかもしれない。スペインでは、ソキート以外にも様々な地域通貨がつくられ流通している。
※「ソキート」に関しては、私が写真を担当した、2月に発売される『雇用なしで生きる』(工藤律子著・岩波書店)という本に詳しく書かれている。
手作りビール
有機農園「ラ・レベルデ」の販売所の前で売られている手作りの製品
スタッフ会議で話す飯塚真紀さん
ミニマーケットで
ミニマーケットには手作りワインも出品される
fotos ©︎Yuji Shinoda
篠田 有史 / Yuji Shinoda
1954年岐阜県生まれ。フォトジャーナリスト。24歳の時の1年間世界一周の旅で、アンダルシアの小さな町Lojaと出会い、以後、ほぼ毎年通う。その他、スペイン語圏を中心に、庶民の生活を撮り続けている。【写真展】冨士フォトサロンにて『スペインの小さな町で』、『遠い微笑・ニカラグア』など。【本】「ドン・キホーテの世界をゆく」(論創社)「コロンブスの夢」(新潮社)、「雇用なしで生きる」(岩波書店)などの写真を担当。