2019年04月
スペインの家庭のデザートは、どれもとても簡単。お鍋ひとつ、フライパンひとつあればできるものが大部分です。
ただし、代表的なデサートのひとつである「アロス・コン・レッチェ」は、簡単だけれどかなり時間がかかることが難点だなと常々思っていました。水からお米をしっかり茹でて、それから牛乳でゆっくり煮込むので、およそ1時間はかかってしまいます。それでもこれは、私がスペインで出会った中で、一番失敗のないレシピです。いきなり牛乳でお米を煮るというやり方は、お米が生煮えになってしまうこともあって、なかなか難しいからです。
そんな私に、「簡単アロス・コン・レッチェ」を提案してくれたのは、私が教えている大学のゼミの学生さんでした。
「先生はお米を茹でて、それから牛乳で煮ると教えてくれたので、ちょっと手抜きして、余っていたご飯を牛乳で煮てみました」とレポートしてくれたのです。
なるほど、どうせ水で茹でるのだから、日本風に炊いたご飯でも、そんなにできあがりは違わないかもしれない。ということで私も試してみると……。お米にはしっかり牛乳の味がしみて、おいしくできあがりました!
なにより、お米がちゃんと煮えていて生煮えの心配がないのが嬉しいです。若者の発想は、大いに参考にしないといけませんね。
この新アイデアのおかげで、アロス・コ ン・レッチェが短時間でできてしまったので、それを使ってパステルも焼いてみました。こちらはビルバオ一帯の名物で「パステル・デ・アロス(お米のタルト)」という名前なのに、なぜか今ではお米を使わずに小麦粉で作るのが一般的になっています。でも元々のレシピは米粉なので、 アロス・コン・レッチェで作るととてもおいしくできるのです。冷凍パイシートを使って簡単に、こちらもぜひお試しください。
最後に注意事項。アロス・コン・レッチェは、これでもかというくらい甘く作ってください。甘くないとおいしくないデザートなのです。甘すぎるものは苦手という方は、食べる量で調節して。冷たくした甘いアロス・コン・レッチェ、きっと気 に入っていただけると思います。
Arroz con leche
アロス・コン・レッチェ
材料
炊いた米 | 2カップ |
---|---|
牛乳 | 4カップ |
砂糖 | 120g |
シナモン | 半本 |
レモンの皮 | 半個分 |
作り方
1. 炊いた米は、ざるなどで軽く洗って、塊がない状態にしておく。
2. 鍋に牛乳とその他の材料を入れて軽く熱し、砂糖を溶かす。
3. 鍋に米を加えて、ときどきかき混ぜながら、弱火で20分ほど煮る。
4. 冷蔵庫で冷やし、好みでシナモンパウダーを振って出す。
Pastel de arroz
パステル・デ・アロス
材料
アロス・コン・レッチェ | 1 + 1/2カップ |
---|---|
バター | 50g |
卵 | 1個 |
冷凍パイシート | 1枚 |
作り方
1. 温かいアロス・コン・レッチェと常温のバター、溶き卵をミキサーに入れて回し、なめらかな生地を作る。
2. 冷凍パイシートを室温にして薄く伸ばし、プリン型やカップケーキ型などに敷き詰める。オーブンを200℃に余熱しておく。
3. パイシートに中身を入れてオーブンでこんがりするまで15分から20分焼く。
渡辺 万里 / Mari Watanabe
大学時代にスペインと出会い、 その後スペインで食文化の研究に取り組む。1989年、東京に『スペイン料理文化アカデミー』を開設しスペイン料理、スペインワインなどを指導すると同時に、テレビ出演、講演、 雑誌への執筆などを通して、スペイン食文化を日本に紹介してきた。「エル・ブジ」のフェランを筆頭に、スペインのトップクラスのシェフたちとのつきあいも長い。著書は『エル・ブジ究極のレシピ集』(日本文芸社)、『修道院のうずら料理』(現代書館)『スペインの竈から・改訂版』(現代書館)など。
<スペイン料理文化アカデミー>
スペイン料理クラス/スペインワインを楽しむ会/フラメンコ・ギタークラスなど開催
〒171-0031 東京都豊島区目白4-23-2
TEL: 03-3953-8414 HP: www.academia-spain.com