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acueducto 24 特集「オリーブジュースの魅力を探る」

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オリーブジュースの魅力を探る El aceite de oliva


田中富子

 2014-2015収穫年のオイルは、その生産量と官能見地においても不作の年だった。理由としては、その前年度まで豊作の年が多く、木自体が疲労していた(六つ子を毎年産んでいるようなものであろうか(笑)。)、5月の開花時に高温になり花が散ってしまい結実しなかった、干ばつであったということが上げられるが、ハエンにおいての生産量は60%減少と言われた。官能見地においては、収穫時期の高温によりオイルの香りの強度が低くなってしまった。今でも覚えているが、2014年は早いところで9月末から収穫が始まった。高温により成熟が急激に進んだからである。通常は10月下旬から11月上旬開始なので、いかに難しい年だったかが想像できるであろう。2015-2016年の収穫量は例年と比べ中から下とされているが、前年度より上昇するのは間違いない。今期は、やはり開花時の高温、50数年ぶりの夏季時の超高温、そして前年度から続く干ばつで業界人は頭を悩ませていたが、2014年が大不作だったため木が十分休息しているというプラス要素と、灌漑等による栽培技術の進歩により前年度よりも上がる予想だ。灌漑は地下水をくみ上げ利用している農家が多いが、昨年は地下水も干上がる日が何日かあったようで、いかに降水が少ない土地なのかが想像できる。ただ、スペインでは灌漑様式が整っているオリーブ畑はわずか15%程度だということも記憶いただきたい。2015-2016年のオイルは、前年度よりも香りと複雑性が高いので、一般的に出来が良さそうである。しかしながら、ファッション化し始めたと言ってもよい“早収穫”によって、いわゆる“マデラ”の官能見地を持つオイルが多いと感じている。マデラというのは、スペイン語で木という意味であるが、適切な成熟度ではなく、高温など他の気候的原因により果実がうまく発達せずに果肉よりも種子のほうが大きい実がたくさんある状態で収穫搾油した場合に起こる。単純に早く収穫すれば調和のとれた品質の高いオイルが作れると勘違いしている農家もまだ多いのだ。

 最後に購入時のポイントについてちょっと触れてみたい。ノンフィルターのオイルは搾油から短期間で消費をしてほしい。このオイルはある程度の時間が経つと、容器下部に沈殿物がたまる。その沈殿物は水分とオリーブの実の残渣であり、これらは時間と共に発酵工程に入る。発酵する=官能見地に悪影響を及ぼすという意味である。そして前記したとおり、サラサラした舌触りで苦味と辛味がないオイルは劣化しやすいため、少量容器を購入したほうが良い。容器は透明ではなく、光を通さない遮光タイプを選ぼう。光も劣化に影響するからである。最後に、毎回使用後はキャップをティッシュ等でふき取ると良い。キャップの部分が空気に触れ、酸化しやすくなるので、その部分を使用の度に拭き取ることで、注ぐ際その酸化風味がオイルに混ざってしまうのを防ぐ。

 さて、この記事を読んでいただいた何名の方たちがオリーブ教に入信するであろうか。入信された方は是非ご一報を(笑)。

(上)アンダルシア州でよく食されるSALMOREJO(サルモレホ/トマトをベースとした冷製スープ)はガスパチョと共に人気で、エキストラ・バージン・オリーブオイルをふんだんに使っている
(下)スライスしたオレンジにエキストラ・バージン・オリーブオイルと砂糖を少々振りかける。絶品のデザートである

 



田中 富子 / Tomiko Tanaka

 

日本にてフォワーダー、米通信機会社勤務後、2001年よりセビーリャ在住。2006年個人自営業ビザ獲得。2008年アンダルシア州立ハエン大学にてバージン・オリーブオイル・テイスターにおける大学のエキスパートコースを修了し、オリーブオイル・エキスパートに。現在は、オリーブオイルコース、食品輸出入仲介業と執筆業を主に、通訳、翻訳等スペインと日本を橋渡し中。誠実、情熱、感動がモットーの熱い人間です。
www.creapasion.com

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