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acueducto 36 特集「フラメンコ人生、若手が輝く」

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フラメンコの基礎知識


【フラメンコの起源は?】

 15世紀頃、アンダルシア地方に定住したヒターノ(ジプシー)たちが、土着の歌や踊りを取り入れてフラメンコの基礎を培いました。当時は貧しい生活を送る人びとが、厳しい暮らしをお互いに励まし、慰め、乗り越えるために、家族の者同士、仲間内で歌っていた内輪の音楽文化でした。やがて19世紀にカフェ・カンタンテと呼ばれる、フラメンコを出し物として披露するための大衆酒場がスペインの各都市に建てられ、国中で大ブームとなります。この時代から観客向けのエンターティメントとして発展し、踊り、カンテ、ギターのそれぞれの部門で演者が腕を競い合い、プロやアーティストと呼ばれる人が登場し始めます。フラメンコの中枢であるカンテは、ここである程度の形式化が進みました。20世紀前半には、演者たちの活躍の場はラジオ、レコード、映画まで進出し、スペイン国外で公演をする一流のアーティストたちが登場します。その内の1人、ラ・アルヘンティーナは1929年に来日してスペイン舞踊を初めて日本に紹介しました。フラメンコは世界中で知られるスペインの芸能となり、日本を始め数多くの国で愛好家を増やしていくようになりました。

 このように、フラメンコは時代ごとにスタイルを変えて発展しています。昔から歌い踊り継がれている伝統的・古典的な舞台を大切にする人たちがいる一方で、現代では他の舞踊音楽とのミックスや、モダン・フラメンコなどの発展型も注目を集めています。

 

【フラメンコの語源は?】

 諸説あります。アラビア語で「逃亡の農民」を意味する Felag Mengu から来たとする説や、「フランドル地方(オランダ)の」を意味する flamenco が転義したとする説、鳥のフラミンゴ(flamenco)と同じく、炎を意味する flamen から名付けられたとする説などがあります。

©︎Yuki Omori

【歴代の有名なアーティストは?】

 日本にフラメンコが伝わった20世紀以降から抜粋しましょう。初期にカンテで名を馳せた人物にはアントニオ・マイレーナ、ニーニャ・デ・ロス・ペイネスなど。その後70年代に登場したカンタオールのカマロン・デ・ラ・イスラと、彼のギター伴奏をしていたパコ・デ・ルシアは、現代フラメンコに絶大な影響を与えた伝説的人物です。パコはフラメンコ分野に留まらずギター界の巨匠として世界的に知られています。彼らと同世代のカルメン・リナーレスは現在も活躍し、フラメンコ歌手の女王とも評される人物です。この世界のプロの人たちの中にはヒターノにルーツを持つ人たちも多く、例えば非常に有名な舞踊家カルメン・アマジャは、バルセロナのヒターノ系の生まれで一族がフラメンコ界で活躍していました。対照的に、ホセ・グレコは外国出身ですが舞踊家として大成しアメリカにフラメンコ文化を広めました。『acueducto』第8号で特集したカルメラ・グレコは彼の娘です。現代でも数多くの優れたアーティストが世界中で活躍しています。『acueducto』第21号で特集したベレン・マジャも第一線で活躍している1人。彼女は現代舞踊を取り入れて独自のフラメンコ形式を創出したモダン・フラメンコの代表的人物。同じく革新的フラメンコの担い手にはイスラエル・ガルバンもいます。ここでは紹介しきれないので、様々な公演や作品そのものを実際に見てみるのが、彼らの魅力を発見する1番の近道ですね。

【主な曲の種類は?】

Alegrías / アレグリアス
喜びの歌。明るさに満ちたフラメンコの代表曲。

Bulería / ブレリア
生き生きとした調子で、12拍子の速く激しいリズム感を持つ。

Caña / カーニャ
ロンダ山岳で生まれた曲。マントンを用いて優雅に踊る。

Fandango / ファンダンゴ
スペインの土着の民謡から発展した歌。

Garrotín / ガロティン
北スペイン発祥。コルドベスという帽子を被って踊る。

Martinete / マルティネーテ
鍛治職人たちの歌。踊りに杖を用いることもある。

Soleá / ソレア
孤独の歌。ゆっくりとしたリズムで、物悲しさや憂いを表現する。

Siguiriya / シギリージャ
重厚なメロディー。悲壮に満ちた叫びの歌。

Sevillanas / セビジャーナス
セビーリャのお祭りの歌。入門曲として知られる。

Tangos / タンゴス
4拍子の陽気な曲種。南米のタンゴとは異なる。

Taranto / タラント
鉱山の歌タランタから発展した2拍子の曲。悲しさや苦悩を歌う。

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