2017年02月
スペインで日本酒ブームが起こせるか
今回、月桂冠、大関、男山本店、奥の松、浪之音の5つの蔵元をマドリードへ招聘し、1月23日から3日間開催されたマドリード・フュージョンと、このTaste of Japanで日本酒ブースを出展したTOKYO-YAの佐藤博伸氏によると、「本格的にスペインで日本酒を紹介しはじめて3年ほど経つが、反応は年々良くなってきている」という。
TOKYO-YAは、2016年にスペインで初となる日本酒バル「Shuwa 酒和」をオープンし、一般消費者向けに60種類以上の日本酒を紹介するほか、レストランや販売店などの業者向けにも日本酒レクチャーを実施するなど、スペインにおける日本酒エデュケーター的役割も担ってきた。
このように熱心な普及活動にも関わらず、「それでもスペインでの日本酒に対する誤解はまだ根強く残っている」と佐藤氏は語る。スペインでも“SUSHI”ブームに乗って、日本食レストランが急増しているが、そこで供される「日本酒」の質の問題や誤ったサーブ方法もあり、未だに「日本酒とはアルコール度数の高い
リキュールであって、食事の最中に飲む物ではない」と考えるスペイン人は多い。
「これまで、質の低い日本酒を熱燗で出したり、食後酒としてショットで出したりするレストランがほとんどでした。ワインと違って無色透明なのも、蒸留酒という誤解を招いた要因の一つかもしれません」と佐藤氏は分析する。
佐藤氏はこういった状況を変えるために、まず一度飲んでもらうことを重視している。「一度飲んでもらいさえすれば、誤解は解ける」と日本酒という醸造酒
の持つポテンシャルに自信を見せる。
実際、今回表彰されたバスクのレストランmugaritzをはじめ、日本料理以外のレストランであっても、ソムリエがドリンクのリストに日本酒を加える例も出始めている。ミシュランの星を持つレストランの中には、懐石料理などの和食にインスピレーションを得たスタイルや、日本食材を独自の感性で取り入れつつ進化させた料理も多く見られることからも、それらに合わせた飲み物として日本酒が取り入れられていくのも、ある意味で自然な流れでもあり、今後さらなる日本酒の需要拡大が見込まれる。
中村 美和 / Miwa Nakamura
情報工学修士、日本での電機メーカー勤務を経て、2007年に渡西。マドリードにていくつかの企業のウェブシステム開発等に携わった後、CROSSMEDIA WORKS,S.L.を起業。
主に観光や食に関わるプロモーションや、雑誌、ガイドブック、テレビなどの取材コーディネイトの他、マドリード情報を発信するtodomadrid.infoなどを運営。
twitter : @n_miwa @spain_go