スペインの老後の暮らし

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vol.3 高齢者集合住宅コンビビール


篠田有史

 コンビビールは、前回紹介したトラベンソルをモデルに、マドリードで働いていた友人同士が集まって2016年にオープンした。 2018年に取材した時の住人は、58~89歳の89人。住居は、ワンルーム、1LDK、2LDKの3タイプ。大半は1LDKで50㎡の広さがある。入居時に、約1,170万~1,800万円を組合に納め、毎月の生活費は、3食と光熱費、水道代などが全て込みで、1世帯あたり約12万円~28万円を払う。1人暮らしか2人暮らしかと、部屋の広さによって金額は異なる。すでに要介護の人も入居しており、介護士が昼間は1人、夜間は2人常駐して、24時間見守りを続けている。月~金曜日は、毎日5時間看護師がいて対応にあたっている。

月1回開かれる住民集会では、運営スタッフによる行事の説明があり、住民からは様々な意見や要望が寄せられる
パソコンルームのほか、図書室、会議室、ゲーム室、リハビリルーム、診療室など、老後の生活に必要と思われる全ての設備が整っている
フェルナンダさん(80)は、組合員として部屋を持っているが、日頃はバルセロナに住んでいる。骨折をしたので、療養のため介護設備が整っているコンビビールで3週間だけ暮らすことにした

 入居者の元弁護士クルス・ロルダンさん(80)は、「女性も働く時代に、娘に世話を頼むことはできない。高齢者は共に支え合って、尊厳ある余生を送る場所が必要なんです」と語る。

 日本も、自分たちの手で終のすみかとなるような共同住宅を作れるよう、広範な協同組合法を早急に整備することが必要である。

Residencia Convivir
Calle Juan de la Cierva, 6, 16410 Horcajo de Santiago, Cuenca
Tel : +34 969 12 72 36
apartamentosconvivir.com



篠田 有史 / Yuji Shinoda

1954年岐阜県生まれ。フォトジャーナリスト。24歳の時の1年間世界一周の旅で、アンダルシアの小さな町Lojaと出会い、以後、ほぼ毎年通う。その他、スペイン語圏を中心に、庶民の生活を撮り続けている。【写真展】冨士フォトサロンにて『スペインの小さな町で』、『遠い微笑・ニカラグア』など。【本】「ドン・キホーテの世界をゆく」(論創社)「コロンブスの夢」(新潮社)、「雇用なしで生きる」(岩波書店)などの写真を担当。

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