2014年11月
アンダルシアの平原に建つタワー式太陽熱発電2号機
スペインは、知る人ぞ知る再生可能エネルギー大国である。スペインの再生可能エネルギーの全電力に占める比率は30%で、ドイツの 22%をしのぎ、日本の10%よりはるかに高い(2012年の統計)。ということで、数回に渡ってスペインの再生可能エネルギーの状況を紹介することにしよう。
国道からは、3 機のタワーが見える
アンダルシアの平原に突然、巨大なタワーが姿を現す。上部からは光の筋が地上に向かって伸びている。その姿は神々しくすらある。セビーリャ市近郊に立つこのタワーは、 アベンゴア・ソラール社の発電プラント「ソルーカル」の太陽熱発電施設である。発電の仕組みは、地上に並べられた巨大な反射鏡群が反射する太陽熱をタワー上部の一点に集め、その熱で液体(水と溶融塩を混ぜたものなど)を熱し、その液体の熱で水を水蒸気に変え、タービンを回して発電するというものだ。タワー上部から地上にのびる光の筋は、実は地上にある夥しい数の鏡が反射する光の集まったものなのだ。
世界初のタワー式太陽熱発電機・1 号機
右から 1 号機、3 号機、2 号機
タワー上部へはエレベーターで上ることができる。そこからは、他では見られない不 思議な風景が見られる。眼下に置かれた鏡に反射する熱線が上空に伸び、熱線の向こうには近郊の町がゆらいで見える。最初のタワー(115メートル)が完成したのは 2007年で、世界初のものである。現在は3機が稼働している。2号機の高さは160メートルにもなる。3号機は効率化をはかり、小型化するために建設された実験機で、その技術は海外へ輸出されている。1号機は11メガワット(5500 世帯分)、2号機は20メガワット(1万世帯分)を発電している。ここでは、タワー式の太陽熱発電以外に、古くからある太陽熱を曲面鏡で集め、その前に設置されたシリンダー内の油を熱し、その熱で発電するものや、太陽光パネルを使った発電など、いわゆる太陽エネルギーを利用した発電全般の試みがなされている。夏には道路で目玉焼きができる、と言われるセビーリャならではの取り組みである。
反射鏡の列の向こうには、太陽光発電のパネルが並ぶ
タワーを取り囲む反射鏡
反射鏡は太陽の動きに合わせて自動制御で動く
fotos ©︎Yuji Shinoda
篠田 有史 / Yuji Shinoda
1954年岐阜県生まれ。フォトジャーナリスト。24歳の時の1年間世界一周の旅で、アンダルシアの小さな町Lojaと出会い、以後、ほぼ毎年通う。その他、スペイン語圏を中心に、庶民の生活を撮り続けている。【写真展】冨士フォトサロンにて『スペインの小さな町で』、『遠い微笑・ニカラグア』など。【本】「ドン・キホーテの世界をゆく」(論創社)「コロンブスの夢」(新潮社)、「雇用なしで生きる」(岩波書店)などの写真を担当。