2019年10月
今回取材に応じてくれた6人は、日本とスペインの住環境、労働に対する考え方の違い、そして、スペイン国内でも州によって風土性が大きく異なることを教えてくれた。一概に「スペイン」と述べても、そこは多様な人種・宗教・思想の人たちが共存している国際的に開かれた社会だ。仕事の選択も方法もマニュアル主義ではなく個人主義で多様性を受け入れる国がスペインだ。
そしてもちろん、スペインで暮らす、働く、ということはいい面ばかりでもない。自分で創意工夫をして仕事を生み出していくという気概は必要だろう。取材した皆さんも、スペインの高い失業率、外国人労働者のビザの問題、日本社会の常識(遅刻しない、物を丁寧に扱う……)がこちらでは通用しないなど、さまざまな社会不安や苦労話を語ってくれた。
異国の地で働くことに困難はつきものだが、そこで何より大切なのは、たとえ言葉が拙くても、自分の意思をはっきりと相手に示すことだ。感情でも、疑問でも、スペインでは思ったことをちゃんと口にすることが、自分の人となりを相手に知ってもらい、信頼関係を築くカギとなる。
最後に、共通して回答を得られたスペイン人の主な3つの国民性をまとめておこう。
口コミの力
スペインでも「知人・友人からの紹介」効果が強烈に働く。1人がサービスを気に入ってくれたら、その人の口を通して一気に顧客が増えるということも十分あり得る。今回ご紹介した人たちも、スペイン人の顧客は友人の紹介で増えていった、と答えてくれた。これから仕事を見つける場合でも、現地で頼れる知人・友人を見つけて、彼らの紹介で積極的にたくさんの人に会って顔を広げていくことでチャンスは増えていくだろう。
寛容精神
スペイン人の呪文は”Poco a poco”(少しずつやっていこう)、”No pasa nada”(大丈夫だよ、気にしなくていいよ)。仕事がうまくいかなかった時に落ち込んだり、ナーバスだったりするとスペイン人たちはそう言ってリラックスさせてくれる。自分では深刻だと思っている問題でも、彼らの励ましで気持ちが楽になる。失敗した人を責めすぎない、当事者の心の安らぎを大切にするのが、懐の深いスペイン人たちなのだ。
家族愛
スペイン人はとにかく家族と過ごす時間を大切にする。それゆえに、他人の家族への気遣いの精神も生まれてくる。家族のことで何かあったら男性でも仕事よりもそちらを優先できるケースが多く、不安ごとがあると知ると、むしろお客さんから「仕事を休んで家族のそばにいてあげなさい、私たちは待っているから」と言われることもある。週末は家族と過ごして、会社や仕事を優先することはあまりないのが一般的だ。
「スペイン人と日本人は対照的で、お互いのいいところを足して2で割ったら最高なのに」という声も聞いた。励まし上手・褒め上手・盛り上げ上手なスペイン人、彼らの魅力に肌で触れながら、自由な風土で自己研鑽していく……新天地を目指しスペインで次に輝くのはあなたかもしれない。