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acueducto 17 特集「友好の道~和歌山県・ガリシア州交流の記録~」

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友好の道~和歌山県・ガリシア州交流の記録~ EL CAMINO DE LA AMISTAD


州政府表敬訪問

 翌日は朝から州政府訪問を控え、参加者は全員制服またはスーツを着用した。バスを一度乗り換えて、到着した州政府の建物は、大聖堂近くにある石造りの建物とは異なり、円筒状でかなり近代的であった。黒く大きい長机のある部屋でしばらく緊張しつつ待っていると、厚生労働省大臣のベアトリスさんと、青年ボランティア局のオビディオさんがやってきた。

 大臣は、派遣団では唯一の男性である中岸さんを見て「たくさんの女の子に囲まれているから王様みたいね」と言ったり、常に笑顔で接してくれ、私たちの緊張を解いてくれた。この日は予定が詰まっているらしく、短い時間であったが、ガリシアの人々に歓迎されているということを、さらに感じることができた訪問だった。

 余談だが、スペインでは制服、スーツを着ることはあまりないそうだ。日常的にスーツを着る人は主に人に会ったり、重要な仕事をしたりしている人だけらしい。州政府で働いているアナさんもその日ジーンズを履いていた。「デスクワークが基本だから、毎日こんな感じよ。」とのこと。

 

州政府表敬訪問の様子。
普通ではなかなか入れる場所ではないこともあり、緊張気味の派遣団員たちだったが、州政府の方々の気さくなで温かな対応が印象に残っている。

 

巡礼博物館~インターナショナルディナー

 訪問を終えて、巡礼道博物館に向かう。中でも最も興味を惹かれたのは、唯一日本語で書かれた展示品、池田宗弘さんによる「巡礼の道絵巻」であった。フランスの道全ルートを絵巻物風に絵地図として書いている作品であり、美しい挿画はもちろんのこと要所に詳しい解説が書かれており実際に歩いて体験された池田さんの努力の結晶であろうと思った。また展示され見ることができたのは原本の数ページであったが、全容はデジタル化されタッチパネル式の画面で見ることができ、その精密な挿絵を時間がある限り眺めていたいと思った。そしてサンティアゴ巡礼の道の姉妹道である熊野古道を歩く際に使われたであろう草履など、和歌山にゆかりあるものが展示されており非常に親近感を覚えた。

 夜は、日本にいる時から企画していたインターナショナルディナーが開催された。スペインと日本からの参加者が自国ならではの簡単な食事を出し合い、立食会を行った。スペイン側は生ハムやムール貝、タコなどガリシアならではの食事を用意してくれた一方、日本側は外国にも日本の食べ物としてよく知られているおにぎりや味噌汁など数品を出した。食事はどれもおいしく、話も、食べ物の話から話題を広げ、どんどんと交流を深めていくことが出来た。

 また、食事が終わった後にスペインの方たちに日本の伝統文化の一つである浴衣に袖を通してもらった。着付けをするのは、もちろん派遣団である。日本独特の和柄が施された浴衣や帯の柄は好評価で、帯占めの際にはどのようにしているのか食い入るように見ていた。最後に下駄をはき、手を前にして嬉しそうに記念写真をとっていたのが凄く印象に残っている。

 最後に、お互いの国の歌を歌いあって、無事インターナショナルディナーが終了した。

 事前に色々考え、試行錯誤した結果ではあるが、これほど好評をえられるとは想像していなかっただけに、大きな満足感に包まれた。また、食事を通した交流で、日本とスペインの違いがよりよく分かったし、大変興味深かった。これからもっと日本にしかない良さをスペインのみならず、世界に伝えていきたいと感じられる時間となった。

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