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acueducto 24 特集「オリーブジュースの魅力を探る」

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オリーブジュースの魅力を探る El aceite de oliva


田中富子


まもなく収穫を迎えるオリーブの実

 苦味と辛味についてであるが、それらはオリーブの実の中に自然に存在する抗酸化物質であるポリフェノールが決定している。抗酸化物質というのは、酸化しにくいということであり、つまり細胞を酸化しにくくさせる効果を持つことになるので健康にはもちろん良いが、なおかつオリーブオイル自身の酸化(=劣化)を防ぐことにも役立つ重要な要素である。苦味と辛味が少ないオリーブオイルは、ポリフェノールの含有が少ないため、劣化が早いと考えたほうが良い。これはそのオイルが悪いという意味ではなく、搾油後なるべく早く消費してほしいという意味だ。そのため、できればその収穫年を確認し購入したほうがよいであろう。収穫年は、北半球の場合2015-2016年というように理解されるのが通常であるが、それは収穫製造が10月頃から開始され、翌年春まで続くからである。最近では“収穫2015年10月15日から20日”というような詳細までラベルに記載している生産者も少なくない。また、その苦味と辛味であるが、前記したフルーティー度との関わりが強い。フルーティー度の強度が高ければ、苦味と辛味がある程度高くても、それらは嫌味に感じない。その逆の場合は、苦味と辛味が強調されたオイルだと感じられる。EUと国際オリーブオイル理事会の官能評価の規定上でも、苦味と辛味の強度が、フルーティー度の強度よりも2ポイント以上高い場合は、不調和オイルと区分されている。

 正式官能検査は、規定に準拠するテイスティングルームにて、青色のテイスティングカップによって、テイスター個々で評価される。青色のテイスティングカップを使用するのには理由がある。オイルの色はその分類評価には関与しないためである。人間、物質の色を見ると偏見が発生するので、それを避けるためだ。また、個々にテイスティングを行うというのは、他人との会話は禁止され、個人で評価をするという意味である。

 もう1つのエンジョイ・テイスティングは逆にオイルの色も品質の1つとして評価する場合が多い。そのため、ワイングラスのような透明なグラスを使うこともある。また、このテイスティングは個人ではなく団体で意見交換しながら、パンやヨーグルトのような食品を持ち込み、楽しみながら行う。オリーブオイルは調味料であるため、そのまま食すということは皆無で、その他の食品との相性を見ることも必要であり、エンジョイ・テイスティングはその部分も評価することができる。オイルのみでテイスティングした場合と、パンやその他の食品や料理と合わせた場合とでは自分の好みが変わってくることもよくあることだ。このテイスティングでは、前記した調和度、濃厚度、後味、テクスチャー、そして自然の産物であることの証明でもあるリンゴ、トマト、バナナ、アーティーチョーク、ハーブ、アーモンド、刈ったばかりの青草といったような香りや味をも評価し合う。テクスチャーであるが、オリーブオイルにもサラサラしているものとドロドロしたオイルがあることをお気づきだろうか?サラサラしたオイルは多価不飽和脂肪酸(いわゆるリノール酸やリノレン酸)の含有量が多く、逆にドロドロしたオイルはその含有量が少ない=オレイン酸が多いと思ってよいであろう。多価不飽和脂肪酸が多いオイルは、酸化しやすいことを覚えておいてほしい。つまり、サラサラしていて苦味と辛味が少ないオイルは劣化しやすいオイルということになる。

 スペインでは、17の自治州50県のうち13の自治州34県約260万ヘクタールにて、約260品種のオリーブを土地や気候の特性を踏まえた上で栽培している。260万ヘクタールのうち、約60%がアンダルシア州で、ここでスペイン全体の約80%以上のオリーブオイルが生産されている。アンダルシア州の品質の高いEVOの特長を一言でいうと、パンチ力があるというところであろうか。アンダルシアの太陽をたっぷりと浴び、雨量も少ない土地柄のため、水溶性ポリフェノールが溶け出さないことにより、苦味と辛味の強度が高いオイルが形成されるといわれる。スペインの代表的品種と言ってすぐに思い浮かぶのは、ピクアル、オヒブランカ、アルベッキーナ、コルニカブラ、マンサニージャがあげられるだろうか。特にピクアル種は、オレイン酸やポリフェノールの含有量が多いため、安定性が高いオイルとして評価されている。また、スペイン産のEVO、もしくはVOは単一品種が多いのも特徴だ。栽培面積が巨大なため、単一品種オイルを製造しやすいというバックグラウンドがあるからである。


ハエン県に広がるオリーブ畑はオリーブの海と呼ばれる



田中 富子 / Tomiko Tanaka

 

日本にてフォワーダー、米通信機会社勤務後、2001年よりセビーリャ在住。2006年個人自営業ビザ獲得。2008年アンダルシア州立ハエン大学にてバージン・オリーブオイル・テイスターにおける大学のエキスパートコースを修了し、オリーブオイル・エキスパートに。現在は、オリーブオイルコース、食品輸出入仲介業と執筆業を主に、通訳、翻訳等スペインと日本を橋渡し中。誠実、情熱、感動がモットーの熱い人間です。
www.creapasion.com

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