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acueducto 33 特集「エル・ブジのもたらしたもの」

「エル・ブジ」を共有した若者たち
山田チカラ、永島健志

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「エル・ブジ」を共有した若者たち
Jóvenes cocineros reunidos en “El Bulli”

 

 1990年代から21世紀にかけての「エル・ブジ」について、のちにフェランは「我々は20年間で1世紀分の仕事をした」と語っているが、その改革への鮮やかなスピード感に背中を押されるように、世界中から人々が押し寄せた。

 お客としてだけではない。フェランの下で働きたいという料理人志望の若者たちも殺到した。46席のお客に対して50人という驚異的な数のスタッフの多くは、スタジエとして無給でもエル・ブジで働き、学び、過ごしたいという若者たちで占められ、1シーズンに2000人以上のスタジエ希望者がいるほどの倍率だった。

 エル・ブジを体験したこれらの若者たちのなかから、世界のトップに立つレストラン、デンマークの「ノーマ」やイギリスの「ファット・ダック」が生まれたと言っても過言ではない。エル・ブジは多くの料理人を育て強い影響を与えたという見地からも、間違いなく世界の美食地図を書き換えたのである。

 そして日本からも、少なくない数の若者たちがモンジョイ入江を訪れて「エル・ブジでのひと夏」を過ごし、その経験を糧として新しい料理の世界を日本に持ち帰った。「スペイン料理」ではなく「フェランの哲学」を学んで帰ってきた彼らは今、日本の創作料理の世界で活躍している。「僕の料理はスペイン料理ではない。カタルーニャ料理でもない。地中海に生まれ育った僕自身の料理でしかない」と語ったフェランの姿勢は、この若者たちのなかにしっかりと受け継がれた。日本という風土に飛んできたフェランの料理哲学の種からどんな花が咲いていくのか、これからも大いに楽しみに見守りたい。

(渡辺万里)

 

厨房でまかないを食べるスタジエの若者たち(2008) ©elBulliArxiu

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