「プラド美術館展」へ行こう!
2018年05月01日
今、日本でもっともホットなスペイン人画家といえば、ディエゴ・ベラスケス。東京の国立西洋美術館で公開中の「プラド美術館展 ベラスケスの絵画と栄光」すでに見に行かれた方も多いと思います。2018年1月末刊行『acueducto』第32号の特集もこの大型展覧会で、兵庫県立美術館の飯尾由貴子さんとベラスケス研究家の西川和子さんにそれぞれ記事をご寄稿いただき、大変な好評を博しました。
★WEBでも読める特集記事はこちら
★西川和子さんは『宮廷人 ベラスケス物語』(彩流社, 2015年)も出版されています!
ベラスケスといえば《ラス・メニーナス》(1656)の画家、という印象を抱いていた方も多いと思います。この晩年の傑作は、鑑賞者に「絵の中のベラスケスが描いているのは絵の外にいる国王夫妻=私?」という不思議な感覚を抱かせることでとても有名な作品です。その複雑な空間構成から、これまでも大勢の知識人・芸術家たちを魅了してきた作品ですが、もっとシンプルな見方をすると、この絵画は王宮の一室で王家と王家に仕える人たちを描いたものです。もちろん、そこには絵画の中で絵を描いているベラスケス自身も含まれます。西川さんの記事にあるようにこの絵は当初《フェリペ4世の家族》と名付けられていました。
単に天才的な画家であるだけでなく、国王フェリペ4世から絶大な信頼を得て「王宮配室長」の役職も任されていたエリート・ベラスケス。彼なくして17世紀スペイン宮廷を生きた人々(国王、国王の家族、宮廷人)の、今残る数々の印象的な肖像画は生まれなかったでしょう。今回の展覧会で出品されるベラスケスの7点の絵画は、そのことを良く伝えていると思います。
Diego Velázquez, Felipe IV, cazador Hacia 1632-1634. Óleo sobre lienzo, 189 x 124 cm.
ディエゴ・ベラスケス《狩猟服姿のフェリペ4世》1632-34年 マドリード、プラド美術館蔵
©Museo Nacional del Prado
私たちはベラスケスを発見すると同時に、彼に描かれることを必要としたスペイン宮廷そのものを発見するはずです。
先日、Facebookにてご紹介した現在も開催中のプロジェクト「Meninas Madrid Gellery」でも、《ラス・メニーナス》の女官がベラスケスの肖像を原型に、モダンなスパイスを取り入れて現代のマドリード市へと踊り出ました。まさに「作者は死んでも作品は不滅」の一例ではないかと思います。ベラスケスの肖像画たちは、スペイン国民の中にも確かに深く根付いています。そうした意味でも今回の展覧会はスペインに興味のあるすべての方におすすめです。
東京展は5月27日(日)まで、神戸展は6月13日(水)から始まります。