“呪われた映画”『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』が封切!1月24日(金)〜全国ロードショー
2020年01月10日
スペイン文学ファンは見逃せない、とても気になる映画が日本に上陸しました!! 原題 El hombre que mató a Don Quijote(ドン・キホーテを殺した男)、邦題『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』。タイトルが意味する通り、ラ・マンチャの大地が生んだ私たちの不滅の英雄ドン・キホーテに関わる物語です。舞台は400年前ではなく現代のスペインで、『ドン・キホーテ』は劇中でもフィクションとして扱われる、いわば虚構の入れ子構造のあらすじなのですが……しかし内容に先駆けて実は本作は完成する前から「呪われている」と散々言われ続けてきました。何しろ、この映画のプロジェクトが始まったのは、なんと……今から遡ること30年前の1989年。令和2年もびっくりの平成元年です。
『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』『Dr.パルナサスの鏡』と、唯一無二の世界観を誇る作品を世に送り出してきたテリー・ギリアム。映画史にその名を刻み続ける鬼才が、30年間も挑み続けた、スペインの傑作古典小説「ドン・キホーテ」映画化プロジェクト。ヨーロッパ最大規模の莫大な製作費が集められ、2000年にクランクインするも、自然災害を皮切りに、ドン・キホーテ役が次々に腰痛や病に倒れ、主役が幾度も交代、資金破綻と9回の頓挫を繰り返した。だが、ギリアム監督の「最後は夢を諦めない者が勝つ」という高らかな宣言のもと、ついに完成を迎えた!(映画公式サイトより)
もはや公開前から知名度だけ抜群になってしまった本作、ギリアム監督たちはそれに値するだけの前途多難な道のりを歩んできました。プロダクション始動後にヨーロッパから当時の最大規模の巨額資金を集めて、いざ2000年にマドリードで撮影開始。ところがなんと2日目に大雨の災害に見舞われて撮影機材が流される、ロケ地もダメになるという事態に。さらにその数日後にドン・キホーテ役のロシュフォールが腰痛で撮影不可能になって撮影中止に。その後も映画の権利関係で絡れたりドン・キホーテの俳優が決まったと思ったら流れたり。なんども監督は再起動を試みますが、最終的に主演の座を手にしたジョン・ハートは撮影前に大病にかかり2015年には映画制作は中止。この「呪われた」境遇を受けて2010年代には監督自ら「この仕事をするのに人生の多くを無駄にしすぎた」「映画が死ぬ前に、自分が死ぬんじゃないか」(映画公式サイトより)などと弱音を吐くようになりました。けれどもその紆余曲折を経て、2017年にとうとう撮影終了して結実したのが本作です。難行苦行の道をゆきながらも己の信念を貫く英雄ドン・キホーテの姿を、映画公開前にすでに体現してしまっていると言っても良いかもしれません。。
とはいえ気になるあらすじもまた面白い! 原作は、ラ・マンチャの善良な老郷士アロンソ・キハーノが狂気的騎士道の雷に打たれ、自らを遍歴の騎士と思い込んだところからスタートする珍道中でしたが、この映画のあらすじもそんな感じで原作をパロディとしてなぞっています。ちなみに原作は騎士道物語のパロディだったので、これはパロディのパロディ!?
仕事への情熱を失くしたCM監督のトビーは、スペインの田舎で撮影中のある日、謎めいた男からDVDを渡される。偶然か運命か、それはトビーが学生時代に監督し、賞に輝いた映画『ドン・キホーテを殺した男』だった。
舞台となった村が程近いと知ったトビーはバイクを飛ばすが、映画のせいで人々は変わり果てていた。ドン・キホーテを演じた靴職人の老人は、自分は本物の騎士だと信じ込み、清楚な少女だったアンジェリカは女優になると村を飛び出したのだ。
トビーのことを忠実な従者のサンチョだと思い込んだ老人は、無理やりトビーを引き連れて、大冒険の旅へと出発するのだが──。(映画公式サイトより)
果たして21世紀のスクリーンに蘇った英雄とその家臣は、どのような道を進みどのような結末を迎えるのでしょうか。実は本作は2019年のゴヤ賞で「最優秀プロダクション賞」「最優秀メーキャプ&ヘアスタイリング賞」を受賞した、スペイン国内でもとても評価の高い1本。きっと楽しく壮大なスペインの舞台を私たちに見せてくれるはず。すでに「快作」「鬼作」「意味がわからない」と賛否両論でフランスやアメリカの映画界を賑わせているようですが、この映画を見た後に雷に打たれて観客席から次世代のドン・キホーテが生まれる熱いストーリーか、あるいは原作のキハーノ郷士と同じゴールに落ち着くのか。いろいろな意味で楽しみな作品です。
□Información
テリー・ギリアムのドン・キホーテ
2020年1月24日TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開