acueducto 第34号を刊行しました

お知らせ

 ブログでは遅いお知らせとなってしまいましたが、『acueducto』最新号、第34号を7月に発行いたしました。今回の特集はスペインの伝統文化「闘牛(コリーダ)」です。フラメンコとならびスペインの象徴ですが、昨今では動物愛護の視点から廃止を望む声がスペイン本国でも大きく、賛否両論が分かれるテーマでもあります。今回は、存続 / 廃止を議題にするのではなく、なぜこの雄牛遊戯が、スペインの民衆文化として近代に定着したのか? に焦点を当てています。冒頭の記事「「アンダナーダ」で考えた」は、東京闘牛の会(TENDIDO TAURO TOKYO)の会長、荻内勝之先生にご寄稿いただいています。先生は『ドン・キホーテ』研究・翻訳で知られ、1年前の『acueducto』第29号の堀越千秋特集でも、ドン・キホーテとサンチョ・パンサを軸とした画家への追悼記事をお寄せいただいています。今号も、闘牛場を日本人にも身近な野球場と比較しながら歴史を紐解くという面白い切り口で、闘牛をご紹介してくださっています! とても面白い記事ですので、ぜひ皆さまご覧ください。

 今回は、編集部の宮田渚も記事を書かせていただきました。皆さん、びっくりされたと思いますが、私・宮田も実は大学院生時代に闘牛を研究しておりました。きっかけは、フランス人思想家の書いたスペイン文化論。生と死の交流が実現する場として、他のヨーロッパには絶対に存在しない文化として闘牛が紹介され、またその死を文化として、日常的に受容するスペイン民衆を称揚する論考でした。フランス人からすれば、産業発展の枠組みから外れた世界で息づくスペインの土着文化は、異国情緒に溢れて見え、「我々にはないものを彼らは持っている」と感じられたかもしれません。アンダルシア文化を倦厭しがちなバルセロナの芸術家たちに闘牛の魅力を紹介したのは、パリのフランス人たちだった、という説もあります。

 スペインを旅行すれば、あちこちの街に闘牛場があります。特に盛んなアンダルシアでは街角やバルの店内で闘牛モチーフを見かけることも珍しくないでしょう。そして記事でご紹介したように、多くの芸術家たちがこの文化に魅了され、作品を残しました。中でもピカソは、絵画の闘牛士と呼ばれることもあり、大勢の闘牛士とも交流を深め、本当に心からこの文化を愛していました。闘牛そのものは動物の命を奪う死の舞台ですので、生々しい、苦手、嫌いという方も多いと思うのですが、歴史的観点から見直すと興味深い背景が見えてきます。今回の特集記事は、多くの読者様からご感想・反響をいただきました。ありがとうございます。

 毎号、『acueducto』はPDF版でもWEB公開しておりますが、冊子で読みたい方は定期配送を受付しておりますのでお気軽にお申込みください。今号も、どの記事も面白いものばかりですので、それぞれのテーマの関連事項やニュースもブログで随時ご紹介していきます!

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