フェリア・デ・オトーニョのための闘牛士の写真展

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スペイン最大級のマドリードのラス・ベンタス闘牛場では、秋と闘牛祭 Feria de Otoño が9月最終週から開催されます。これのプロモーション活動のひとつとして、今ラス・ベンタス闘牛場の関連会社「Plaza 1」が主催する闘牛士の肖像写真展覧会が現地で行われています。写真家ホセーラ・ロサーノ氏の作品で、それは19世紀の闘牛士たちを撮影したのと同じ手法で撮られています。つまり現代技術であるデジタルカメラやスマートフォンで撮ったものではなく、コロジオン湿板という19世紀に発明された技法で撮られた白黒写真です。日本でも幕末や明治時代(坂本龍馬の肖像写真など)にはこの技法で撮影されていました。闘牛は前世紀に市民たちの興行としてのスタイルを確立後、19世紀〜20世紀前半のスペインで絶世期を迎えました。だから現代の闘牛愛好家たちも100年以上前のこの時代、この手法で撮影された歴代の偉大な闘牛士たちの肖像写真には馴染みが深く、それを使って今回は21世紀の現役闘牛士たちを撮影したということです。このコロジオン湿板によって映し出された「光の衣装」の陰影やテクスチャーの美しさは、デジタル技術では決して表現できないものだといいます(下のリンク先ページで実際の写真を見ることができます。確かに闘牛士たちの顔立ちの現代性、衣装の上質さや精巧さがよく伝わってきて独特の印象を覚えます)。

https://www.aplausos.es/noticia/50850/noticias/la-feria-de-otono-sigue-apostando-por-el-clasicismo.html

「私たちの部の、はっきりと異なっている点は(今回の企画が)芸術と文化の部門であること、私たちはこのメッセージ持続的に伝えていかなければならないということです。この企画は歴史的なサン・イシドロ祭とフェリア・デ・オトーニョから成り立っています。この祝祭において(闘牛の)芸術的な継続性について模索し、希望しています。(フェリア・デ・オトーニョは)合法的で正当な祝祭なのです、未来のための伝達となる祝祭なのです」(「Plaza 1」代表シモン・カサス)

上のコメントからは現代スペインの闘牛愛好家たちが立たされている苦境が読み取れます。闘牛を今なおスペインで興行するとき、廃止論者からの強い批判を避けて通ることはできません。「強烈さ」時には「おぞましさ」が内在する文化で、かつてはその死や危険の一過性に重きが置かれていたと思いますが、現代ではそれが直ちにメディアやSNSで流れて反復されていきます。だから主催側や愛好家団体側も、そうした強い批判の声に非常に過敏になっています。スペインで生まれたこの伝統文化をどう伝えるか、あるいは「文化ではない」という声の下で、伝えられないまま歴史が忘れられていくか。今回の写真展は、そうして模索していく中で立ち上げた側面も強いと思います。

acueducto 34 特集「LAS CORRIDAS DE TOROS -闘牛-」

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