先日の7月20日（土）に姫路市立美術館で開催中の展覧会「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」へ、acueducto スタッフも行ってきました。まず一言で表すなら情報の波！　これはバルセロナに興味がある人（旅行にいきたい人）、行ったことのある人、この街とカタルーニャ地方の歴史背景に関心のある人、あるいはスペイン美術が好きな人……すべての方が行くべき展覧会だと思いました。いくつもの大きな美術館のあるバルセロナですが、その各施設から借出された絵画・彫刻・建築関連の作品が揃っています。

姫路市立美術館で明日から開幕「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」

　モデルニスモ（ムダルニスマ）建築（アントニ・ガウディ、プーチ・イ・カダファルク、ドメネク・イ・モンタネール）では実際の建物に使用されているタイルやステンドグラス、家具などが展示され、バルセロナの伝統工芸の技術力の高さと、ガウディらのデザインの創造性の豊かさを実感することができました。また絵画については、スタッフも現地を訪れた時に観たことのある作品もあったのですが、今回の展覧会で鑑賞することで非常に勉強になりました。というのも各作品のキャプション解説がとても丁寧＆緻密。作品を観るだけでなく解説をしっかり読むことで、19〜20世紀のバルセロナの都市開発や、カタルーニャ地方の文化的アイデンティティー確立の困難と模索、スペイン全体の近代美術におけるバルセロナという場所の重要さなど、さまざまな角度からこの地を知ることのできる構成になっていました。

　スペイン近代美術を代表する巨匠（ガウディ、ピカソ、ミロ、ダリ）の作品はもちろん、他にも面白い資料や作品が多数。イルデフォンス・サルダーによる碁盤目状の都市開発計画、文化的な言語として称揚され始めたカタルーニャ語、「クアトロ・ガッツ（四匹の猫）」の精力的な文芸活動、その中でも特にラモン・カザスの多芸多才ぶり、地中海に目を向けたノウセンティズム固有のフォルム……etc。本当に面白くて時間がいくらあっても足りないくらいだったのですが、展示作品の中でも個人的にとっても好きだったのが「クアトロ・ガッツ」立ち上げ人の一人サンティアゴ・ルシニョールが描いた《自転車乗りラモン・カザス》（1899年）です。大型のこの絵画になぜか魅入られてしまいました。自転車はこの時代に流行し始めた洒落たスポーツだったそうで……。

Casas-Rusiñol. Dos visiones modernistas

Burgueses y bohemios, pintores de éxito en España y Europa y principales representantes del modernismo catalán, Santiago Rusiñol (1861-1931) y Ramón Casas (1866-1932) son dos de los grandes artistas españoles de finales del siglo XIX, renovadores del panorama pictórico de su tiempo e introductores de la modernidad que conducirá a la vanguardia en el XX.

ルシニョールとカザスの銅像は、彼らが滞在したシッチェスに！　展覧会にはシッチェス時代の解説や作品もありました。
出典 / Wikipedia ©︎Enrique Íñiguez Rodríguez

　またこの日は運よく講演会にも参加できました。1987年に神戸の兵庫県立近代美術館（現：兵庫県立美術館）で開催された展覧会「カタルニア賛歌　芸術の都バルセロナ展」を企画・開催された専門家の山脇一夫先生のお話を聞くことができ、今の展覧会での展示作品と併せてWで勉強になりました。ちなみに、1987年に神戸で開かれた上述の展覧会と、同じ時期にイギリスで開催された「カタロニア讃歌」という展覧会が、世界で初めてカタルーニャ地方のひとつのまとまった文化・芸術を取り上げたものだったそうです。今はサッカーで話題ですがバルセロナと神戸とのつながりを改めて感じた機会でもありました。

　なお姫路市立美術館の「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」鑑賞チケットが、acueducto 最新号の読者プレゼントで5名10組様に当たります！（応募〆切：8月9日）当選者への鑑賞チケットの発送は8月下旬ですので、8月末〜9月でこの展覧会に行こうかな？　と考えている方はぜひacueducto最新号の読者アンケートにご回答ください：アンケートページ ★雑誌のPDF版をご覧いただいた方でも回答できます。PDFリンク

　情報がぎっしり詰まった展覧会カタログも貴重で即購入！　バルセロナについて、この街で開花した芸術について知りたい方は行ってみましょう。なお姫路の後は札幌、静岡、東京と巡回します。