ヘンティリシオに法則は存在するのか?

スペイン語

 

 スペイン語で日本人のことは「japonés / japonesa」ですね。この言語を習い出して、最初に覚える単語の1つだと思います。ところで、スペイン語には国名・地名ごとにその土地の人・ものを指す言葉(文法用語ではgentilicio ヘンティリシオと言います)がありますよね。マドリード人はmadrileño、バルセロナ人はbarcelonés、セビーリャ人はsevillano……etc。もっと広く言えば、カスティーリャの人・ものはcastellano、カタルーニャはcatalán……こうしたヘンティリシオがスッと言えると会話がスムーズになるので、使えるにこしたことはないですね! 実は日本について言う場合も、単にざっくばらんにjaponésだけではなくて、海外でもよく知られている都市(東京、大阪、京都)に関してはヘンティリシオが存在することが分かりました。

 

 

 自己紹介の時に「Yo soy osakeño」なんてスって言えたら良いかもですね。ただおそらくこれらの日本のヘンティリシオを知っているネイティブは、もともと日本通だと思います。¿Qué es osakeño? と普通に返される場合もあるので、その際は改めて「Soy de Osaka」と言い直しましょう(さらに調べたら「奈良人」もnarenseという呼び方がありました)。

 そんな形になるの? と面白いヘンティリシオ(グアテマラ人なんてグアテマルテコ!)ですが、この変化には何らかの法則があるのでしょうか。Osaka → osakeño は Málaga → malagueño の変化と同じですし、Kioto → kiotense は Estados Unidos → estadounidense と同じですから、元となる名詞の語尾がどうなるかによって……と考えてしまいたくなりますね。そこで早速、RAE(スペイン王立アカデミー)のWEBサイトでその法則が載っていないか探してみました! が、出てきませんでした。

 どうなっているんだ〜と思った矢先、メキシコ言語アカデミー(Academia Mexicana de la Lengua)のページで答えを見つけました:

 

【質問】
¿Existe alguna regla para agregar la terminación a un gentilicio?
¿El gentilicio de Cintalapa es Cintalapanense o Cintalapeño?
ヘンティリシオの語尾を決定するための何らかの法則はあるのでしょうか?
チンタラパ(メキシコの地名)のヘンティリシオはcintalapaeseなのか、cintalapeñoなのか?

【回答】
No existe una regla para formar el gentilicio de cada nombre de lugar, y tampoco es posible prever el sufijo que se elegirá para formarlo. Algunos lugares poseen más de un gentilicio, a veces usado en distintos contextos o en diferentes épocas: brasilero y brasileño ; salmantino, salamanquino y salmanticense . A su vez, algunos sustantivos que designan ciudades o regiones del mismo nombre en países diferentes se distinguen por sufijos diferentes: santafereña (de Santa Fe de Bogotá, Colombia) y santafesina (de Santa Fe, Argentina). En el caso de Cintalapa , el gentilicio más frecuente es cintalapaneco .
それぞれの土地のヘンティリシオを決めるための法則はありません。ゆえに接尾辞を予測することもできません。土地の中には、1種類以上のヘンティリシオがあるところもあり、文脈や時代によって変化することもありました。例えば、ブラジルはbrasileroとbrasileñoというヘンティリシオがあります。またサラマンカは、salmantino、salmanquino、salmanticenseがあります。ところで異なる国同士で同じ名前の土地があることがありますが、この時はヘンティリシオで国を区別することもあります。例えば、santafereñaはコロンビアのサンタ・フェ・デ・ボゴタのことで、santagesinaはアルゼンチンのサンタ・フェです。質問の場合でいえば、チンタラパでよく使われているのはcintalapanecoです。

 

 なんと意外な結果。ヘンティリシオの法則はありそうで、ない! ということでした。要は好きに接尾辞(sufijo)をつけて作れてしまうんですね。そして、一番使われている形が、そのままその土地のヘンティリシオとして定着するようです。じゃあどういう基準で複数から決定するんだろうと思いますが、そこは、人びとの会話の中で語感がしっくりくるものが選ばれるのでしょうか(弊社スタッフの1人が「京都人」キオテンセってすごくそれっぽい! と言ってました)。なんだかとても自由だな、と思ってしまいますが、一応、接尾辞にもいくつかのパターンがあります:-a, -aco, -án, -ano, -ar, -eco, -ego, -ejo, -enco, -eno, -ense, -eño, -ero, -és, -í, -ico, -iego, -iense, -ino, -ita, -o, -ol, -ón, -ota …

 ……いくつかどころの話ではありませんでした。

 大阪人もosakenseでもいけるのでは。神戸人はkobenseかkobejoあたりかな? スペイン語の会話中で自分で作ってみるのも面白いかもしれません。ネイティブたちも結構、造語が好きですよね。またこれだけ自由に作れるので、同じ地名のヘンティリシオでもわざと2種類以上を使い分けて、暗に違う意味を含ませている……ということもあるんだろうな〜と思います。

VOLVER

PAGE TOP