スペインの奇妙な通りの名前

スペイン語

 スペインの通りは「Calle …」から始まり、それぞれに名前がついていますね。聖人や英雄の名前がついていたり、歴史的な出来事を象徴する日付や固有名詞がついていたりします。しかし中には、「なんでこんな名前なの?」と疑問を抱かざるを得ない奇妙な名前のついた通りがあります。

 例えばパンプローナの大聖堂の近く、サン・ホセ広場の一角にある「Calle de Salsipuedes」。無理やり日本語に訳すなら「通れるものなら通ってみやがれ通り」でしょうか? 道の入口には閉鎖を思わせる黒い柵があり、どことなく怪しい雰囲気。かつては「出口なき道」と呼ばれていたとか。長さはわずか23mというとても短い通りで、スペインでは7番目に短い通りとしてランクインしているそうです。サン・ホセ広場からこの道に入ると、奥は跣足カルメル修道院(el convento de las Carmelitas Descalzas)の入口に続いています。それ以外の抜け道がないので、まさにどん詰まりの道なんですが。

 

 

 奇妙な名とはいえ、歴史的な由来があります。「Salsipuedes」つまり「salid si podéis(通れるのであれば通りなさい)」という言葉は、かつてこの修道院で暮らしていた修道女たちに向けられたメッセージだったそうです。彼女たちが聖域の外へ出て行くことは禁忌とされていました。その罪を犯してでも修道院から出て行きたいのであれば……という、いわば脅し文句ですね。なので上に書いた「通れるものなら通ってみやがれ通り」だと教会由来の言葉としては訳がちょっと乱暴なので「出て行けるのなら出て行きなさい通り」の方がいいですね(一緒か)。ちなみに同じ名前の道は、パンプローナのほかマドリードやハエン県にも実在するそうです。あちこちで修道院の外出禁止を巡る物語があったようですね……。

 またバジャドリードのウルエニャにもまったくもって可笑しいとしか言いようのない通りがあります。「Calle Catahuevos」。こちらは無理やり訳すと「卵鑑定通り」です(catarは検査する、味見するの意)。スペインの奇妙な名前の道として特に有名な場所です。で、ウルエニャはそれぞれの通り名のプレート下部に、ご丁寧にその由来が書かれているのですが、この道には以下のような説明がなされています。

 

“Lugar donde los recoveros solían catar los huevos que estaban frescos poniéndolos en el hueco del ojo y mirando a la luz del sol”

「卵商人たちが、卵を己の眼窩に入れてみたり太陽の光にかざして観察したりすることで、新鮮な卵を鑑定していた場所」

 

 

 己の眼窩に卵を入れる!? 一瞬恐ろしいことを考えましたが、おそらく日本語で言うところの「目の彫り」に卵を押し当てて形を図っていたのでしょうかね。なるほど……確かに現地には卵が収まりそうなほど彫りの深い人もいますしね(でもそれで新鮮さがわかるものなのでしょうか)。ウルエニャの通りはそれぞれに歴史的なエピソードの説明書きがつけられているので、散策するととても面白い場所です。「Corro Bolinche」はかつてそこで住人がボール投げ(jugar a los bolos)に興じていたところ、「Calle de Azogue」はAzogue(市場)が開かれていたところ……etc。生活空間にこうした様々なアーカイブが隠されているので、この町は「La villa del libro(本の町)」とも呼ばれています。

 他にも、スペイン各地に奇妙な通りの名前はたくさん現存しています。最近名付けられた「イマドキ」な通りもあります。サラゴサはビデオゲームの人気タイトルを命名するという大胆なこともやってます。「スーパーマリオブラザース通り」「テトリス通り」「ファイナルファンタジー通り」。他にも映画の題名が通りになっていたりとか。「La Calle Todo Sobre Mi Madre(オール・アバウト・マイ・マザー通り)」。これもサラゴサにあります。

 まあ個人的には、最後に登場したイマドキのストリート名より、ウルエニャの卵鑑定通りのような初見では訳がわからないけれどもちゃんと謂れのある名前の方が好きなんですが。スペインの印象的な地名や通り名、そこから歴史的なエピソードを紐解いていけることもあるので、皆さんもぜひ探してみてくださいね。

 

参考サイト:

Las calles con los nombres más curiosos de España

1. Calle Me falta un tornillo En Arrollo de la Encomienda, a tan solo siete kilómetros de Valladolid está la Calle Me falta un tornillo. En esta calle se ubica desde 2002 la tienda de Ikea y fueron los propios ciudadanos los que eligieron el nombre a través de una votación alojada en la página de Facebook de la tienda.

CALLE SALSIPUEDES.

Salsipuedes. Y entra si te dejan se decía en Pamplona. El nombre le va como un guante estrecho a la calle más corta de Pamplona, que con sus 23 metros de largo resulta un difícil campo de entrenamiento para una Javierada. Por cierto, ocupa la séptima posición en el estrambótico ránking de las calles más cortas…

URUEÑA, el pueblo con más librerías de España

Cual imponente vigía del tiempo observa desde lo alto de una loma el basto paisaje de Tierra de Campos. Enclavada en Castilla y León, más concretamente en la provincia de Valladolid, ésta aldea medieval se halla enmarcada dentro de los Montes de Torozo.

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