サウジアラビアで牛追い祭り?
2019年01月29日
Arabia Saudí importará los Sanfermines
Arabia Saudí quiere apostar por el entretenimiento para despojarse de la imagen de reino ultraconservador y cerrado que proyecta aún su monarquía. El país, el mayor exportador de p
パンプローナのサン・フェルミン祭は、スペインを代表するお祭りの1つ。世界でも類を見ないイベリア半島特有の雄牛祭ですが、なんとこれを中東のサウジアラビア王国が導入したいそうです。これは王宮の意向で、未だに「超保守的で閉鎖的」と見なされている君主制のイメージを払拭するための国策だとのこと。ではなぜサン・フェルミン祭なのかというと、石油輸出大国サウジの億万長者たちの間で今「闘牛ブーム」が来ているからだそうです。スポーツ部門最高責任者のタルキ・アル・シェイフ王子は報道陣に対して「闘牛を開催する予定だ。すでに雄牛とスペイン人専門家たちを呼び寄せている」とコメント。実現はまもなくの模様。
8日間もの間、大勢の人たちが狭い路上を突っ走りその後を怒涛の勢いで雄牛たちが駆けていく、スペインのサン・フェルミン祭。それをそっくりそのままサウジアラビアの都に移植するのかというと、飲酒法の観点から完全再現とはならない様子。本場パンプローナでは祝祭の期間は街がサングリアまみれになりやれ飲めや騒げやの乱痴気騒ぎになりますが、サウジアラビアではアルコールの輸入販売禁止、アルコールの摂取禁止、アルコールの精製禁止という厳しい取り締まりがあります。それでもアル・シェイフ王子は「今年中に実現する」と宣言。お酒は登場しないがそれ以外の要素は案外原型を保った舞台が出来上がるかもしれません。午後の闘牛では闘牛士たちはスペインの伝統衣装を着込むのでしょうか……? そもそもサン・フェルミン祭のエンシエロ(牛追い)の正装はナバーラの伝統衣装ですが、そこは別ユニフォームとなるのでしょうか?
なおこの企画のために招かれたスペイン人関係者(闘牛事業者や牧場主など)が誰なのかはまだ明らかにされていません。ただ、サウジアラビア政府は今回の計画と関連して、すでに国内外の企業と100を超える長期間契約を締結しているとのことです。さらにサン・フェルミン祭の実現のみならず、この国はNBAの主催、マジックショー、カーレース、劇場公演、電子スポーツ大会、アラブ音楽や国際音楽コンクールまで企画しているとのこと。実は昨年、サウジアラビアは35年間の禁止期間を経て映画上映が解禁されたばかりです。なぜイスラム教の戒律の厳しい国でこんなにエンターテイメント熱が高まっているのかというと、諸外国の文化、お祭りを導入していくことで「ポスト石油大国」としての存在感を各国にアピールし、また昨年にトルコ大使館で起きた記者殺害事件で失墜した国際的信用を回復したいもくろみと思われます。
そうしたイベントの中心地として、現在サウジアラビア王国が特に開発に力を入れているのが首都リヤド郊外の総合エンターテインメント地区「Qiddiya」。アメリカ、フロリダ州の「ウォルト・ディズニー・
ところで「サウジアラビア」と「闘牛」、あまり接点がないようにも思われる異国間の組み合わせですが、強いて共通点を挙げるとすれば「男性優位の社会」です。スペイン、そしてフランスなど闘牛が伝統的に実施されている国々では女性闘牛士たちの活躍も目立ってきていますが、全体からすると人数は非常に少なく、また伝統を重んじる闘牛場であればあるほど、女性の出場を認めない傾向があります。サウジアラビアでなぜ今「闘牛ブーム」が到来しているのか、参照元の『El Mundo』誌の記事にはそこまでの解説はありませんでしたが、こうした闘牛世界における男女比率も関連があるかもしれません。一方のサウジアラビア。イスラム教の厳しい戒律から女性の人権が非常に低い国として知られていますが、実は昨今、女性の権利拡大が著しくなってきています。昨年にはこの国で長らく禁じられていた女性の自動車運転が解禁されたことで「抑圧の象徴に風穴を開けた」と大ニュースになりました。その他にも女性のための有名ブランドのファッションショーの開催や、女性の雇用市場の拡大など、権利や待遇に改善の動きがあります。とはいえ、元来女性に制限されていた事柄が非常に多い国ですので、まだ男性優位、女性にとっての不自由が数多あるのも事実。ちょうど、展開を見せ始めたところと言えるでしょうか。
欧米諸国に対抗するエンターテイメント事業の取り組み、女性の権利問題への取り組みなど、現政権ムハンマド皇太子率いるサウジアラビアが国をあげて変革に乗り出していることは自明で、そうした中で「スペイン」がどう消費されるのか。砂漠のサン・フェルミン祭を目撃する日はそう遠くなさそうです。