イベリコオオヤマネコの増加がもたらす生態系への影響

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イベリア半島にのみ暮らしている肉食系哺乳類イベリコオオヤマネコ(lince iberico)。今世紀頭にはわずか94頭しか生体が確認されていませんでしたが、その後の手厚い保護活動によって2013年頃には300頭ほど、そして2019年現在は700頭まで数が増えています。主な生息地域はもともとアンダルシア地方のドニャーナ国立公園やカソルラ山地付近でしたが、増加に伴い群れが移動し、現在はラ・マンチャ地方やエストレマドゥーラ地方でも確認されています。イベリア半島固有種としてイベリコオオヤマネコが半島全体に増えていくことで、ポジティブな生態系への影響があるという研究結果が先日発表されました。

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保全生態学の専門誌『Biological Conservation』に掲載された論文によると、イベリコオオヤマネコは、他の肉食動物と同様に小さな鳥や哺乳類(ヤマウズラやウサギなど)を餌としています。今世紀に数を回復し始めた彼らの存在が抑止力となって、別の捕食動物(キツネやエジプト・マングース)が獲物を取りすぎるのを抑え、結果的にこれらのヤマウズラやウサギの個体数も増えているそうです。キツネやマングースはむしろこれまで増えすぎていて、その食害で小動物は数を減らしているという問題があったので、生態系のトップに君臨するイベリコオオヤマネコの増加が、生態系全体のバランスを回復させているということです。

研究者たちはエストレマドゥーラ地方の溪谷で木にカメラを固定させ、3年間に渡ってイベリアオオヤマネコの生態を観察。そこで収集したデータから、彼らが他の肉食動物による狩りをおおよそ半数以下にまで減らしていることがわかりました。「この発見は、とても重要です。なぜならイベリコオオヤマネコは私たちの国に、特に生態系のためには必要であるということがわかったからです」。研究結果によってキツネはある地域の9つの群れが1つに、マングースは37の群れから8の群れまでに減少したことが確認できました。ところで、イベリコオオヤマネコが今後も増えることで、じゃあウサギがやがて数を減らすのでは? という心配については、ウサギの繁殖力はイベリコオオヤマネコの狩猟回数を上回っているので、ウサギが絶滅することはないそうです。

かつては世界のネコ科の肉食動物の中でも特に絶滅が心配されており、徐々に個体数を回復させ生息域を広げ始めたイベリコオオヤマネコですが、この調査によってますますその保護の重要性が明らかになりました。ドニャーナ国立公園を訪れたら「生態系の救世主」の勇姿を見ることができるかもしれません。

 

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