「Nuevo Flamenco」の歌姫Rosalía

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 スペイン気鋭の歌姫 Rosalía。カタルーニャ出身の若手シンガーですが、アンダルシアの伝統音楽たるフラメンコを楽曲のベースに取り入れることで、ポップでありながらもメランコリック、独特の曲調を生み出している彼女。伸びやかなカンテ調の歌声と、軽やかに続くパロマ、電子音や打楽器に代用されたサパテアードの響くリズム、アンダルシア要素をそこかしこに散りばめた、赤や黒の原色が目に残るミュージックビデオ。魅力的な作品をこれまで連発し、スペイン本国でも若い世代を中心に人気が爆発しています。

 上のビデオは彼女の代表曲とも言える「Malamente」。フラメンコ、闘牛、セマナ・サンタなどのアンダルシアの伝統スタイルについて「古い時代のスペイン」と感じている人は、これを見たらその印象がひっくり返るかも。巧みに現代のストリートスタイルと掛け合わせ、とても新鮮なイメージを与えてくれます。紫のカピロテを被った若者がスケボーをしたり。そしてこの楽曲を聴けばすぐに「あ、フラメンコだ」と思うでしょう! パロマの使い方がうまいですね。色気のある若い声ながら、哀愁的なその歌い方もフラメンコのカンテの張りと緩みを想わせます。彼女の楽曲スタイルは「Nuevo Flamenco(新しいフラメンコ)」とも呼ばれ、現在のスペイン音楽界をそれはもう大きく賑わせているのです。

Rosalía, cantante de flamenco

La catalana no es, ni por asomo, la cantaora que quieren vendernos porque no tiene condiciones para serlo, pero se presentó en la Bienal con respeto

 彼女は今年10月のセビーリャのフラメンコの祭典「La Bienal de Flamenco de Sevilla 2018」にも出場したことで話題にも上りました。ではフラメンコの歌い手(cantaora)の系譜に当てはめることができるのか? となってくると難しい問題。確かに楽曲の中には力強く独唱する非常にカンテ色の強いものもありますが、彼女はカンタオーラというよりも、フラメンコのコンセプトをポップシーンにもたらしたシンガー(cantante)という評価が主流であるかと思います。ジプシー系統のフラメンコの歴史や伝統を重んじる一部の人たちからは、そもそものルーツがアンダルシアではない彼女の「Nuevo Flamenco」に対して批判もある模様。

Mala Rodríguez: “Me parece lógico que las gitanas se cabreen con Rosalía”

La rapera gaditana regresa al candelero con un adelanto de su nuevo trabajo, “Gitanas”, tras cinco años sin publicar disco

 例えば有名なスペイン女性ラッパー Mala Rodriguez(ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ出身、彼女もまたフラメンコとヒップホップを融合させる楽曲スタイル)は、上の『ABC』誌でのインタビューにて、Rosalíaについて「フラメンコへの愛は感じるけれど、演じているだけ」とコメントを残し、先のジプシーたちの声を擁護しています。とはいえ賛否両論どちらにしても、Rosalíaが今後のフラメンコ音楽の発展を期待させるニューウェーブであることは間違いありません。連日、Rosalíaに関する報道がスペイン主要メディアでも流れているので気になる人は検索してみましょう。先日のハロウィーンの夜にはマドリードのコロン広場で野外ライブをしています。寒空の下でステージの上の彼女に見惚れる大勢の若者たち。

 

 そんな彼女はつい最近、新曲「Di mi nombre」を発表しました。これも音階はフラメンコ! 「Malamente」よりもさらにその傾向は強いです。ピンク色のベッドの上で横たわる彼女、このビデオはゴヤの描いた「マハ」から着想を得たとのこと。とてもガーリッシュな空間の中で歌っていますが、やがてヒステリーやホラーの様相も見せてきます。彼女の美的センスに惹き込まれるファンも多いはず。今大のスペインシンガーの1人です!

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