新潟の越後妻有に現れた巨大な雄牛「ブラック・シンボル」

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Japón acoge el segundo toro de Osborne erigido fuera de España

Un toro de Osborne, obra del artista Santiago Sierra (Madrid, 1966), erigido frente al pueblo japonés de Matsunoyama (3.000 habitantes) será el segundo toro no publicitario de Osborne fuera de España, después del construido en el Superkilen Park de Copenhague (Dinamarca) en 2016.

2018年7月31日 El País Web記事

 スペインのシンボルとして知られている「オズボーンの雄牛 Toro de Osborne」。全長14mの巨大な雄牛のシルエットで、全国各地の高速道路を走っていると、脇の丘から見下ろすようにこの像が立っていることがあります。もともとは1956年、シェリー酒の醸造会社オズボーン・グループが自社製品の宣伝のために設置した看板で、かつては全土に500基もありました。現在はスペインに残る「オズボーンの雄牛」は91基ですが、それでも多いですね。スペインを表現するイメージとして浸透していて、お土産用のスペイングッズでもこのシルエットが入っているものを見かけます。

 そんな雄牛ですが、なんとこのたび新潟県に出現しました! 場所は十日町市の松之山温泉。どうしてそんなところに? 実はこれは、現在開催中の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」の出展作品だということです。全長10mの超巨大な雄牛のシルエット。そんなものが緑豊かな日本の原風景にいきなり現れたら、人目を引くのは間違いありませんね。さらにこの雄牛は、耐震性が高く、豪雪にも耐えられる鉄素材を使って制作されたとのこと。スペインの雄牛たちより強度があるのかもしれません。実際にオズボーン社の広報責任者は、「ブラック・シンボル」と題のついた松之山温泉のものは「全ての雄牛の中で、もっとも堅い雄牛だろう Será el toro más seguro de todos」というコメントを残しています。対照的に、スペインの雄牛たちは地震ではなく卓越風対策が必要で、風に向かって鋭利な部分を向けるような設置が要請されているとのこと。

 さて、今回の「オズボーンの雄牛 in 松之山」の発案者は、サンティアゴ・シエラ Santiago Sierra というマドリード出身のアーティスト。

 

1966年スペイン、マドリッド生まれ。ミニマル/コンセプチュアルアートの手法を背景に、資本主義社会や日常に内在する権力や階級のヒエラルキーについて探求する作品を世界各地で展開している。シエラは、貨幣交換や労働搾取をテーマに、社会的弱者を雇って無意味なことをさせるパフォーマンスなど、観客にモラルや正当性を問う緊張感を持った作品を発表し続けている。「大地の芸術祭」WEBより)

 

シエラは「受賞者の名声が国家利益のために政治利用される」という理由から造形芸術のスペイン国民栄誉賞を拒否したにも関わらず、同賞が送られたという気鋭のアーティスト。彼がこれまで世界中で手がけてきた作品は公式サイトからも見ることができます。

Santiago Sierra

Sitio Oficial de Santiago Sierra / Santiago Sierra Official Website, incluye una relación detallada de su obra, Curriculum Vitae, contacto, proporciona imágenes de alta calidad para publicaciones.

そのシエラは日本が好きで、この国の田園風景に雄牛のシルエットがよく溶け込むであろうという着想から、オズボーン社に像設置の許可を求めたとのことです。オズボーン社側にとっても、新潟に像を提供することは日西外交樹立150周年記念の事業のひとつとなりました。

 また参照元のEl País 記事は「大地の芸術祭」組織委員会側のコメントも報じており、今回の「ブラック・シンボル」は芸術祭の環境保護規範をクリアし、イベント終了後もご当地作品として設置、カタログ掲載されることが「ほとんど決まっている」とのこと。この像の設置の意外性は、スペイン人という集団的アイデンティティの象徴であるにも関わらず、日本という異国の地に設置されたことにあるでしょう。これまで「資本主義社会や日常に内在する権力や階級のヒエラルキーについて探求する作品を世界各地で展開」してきたシエラが、単に「スペインの」シンボルを称揚する意図でこの地に雄牛を立てた訳ではないはずです。

 

越後妻有の風景に突如現れるのは、巨大な「オズボーンの雄牛」。雄牛のシルエットを模した、高さ約10mの黒色看板である。作家の母国スペインの国民的とも言えるこのシンボルは、人里から少し離れた自然のなかの高台に設置され、まるで薄っぺらい影のように、だが勇敢に佇んでいる。文化も歴史も異なるスペインのシンボルが、越後妻有の見慣れた風景のなかで何を物語るのか。これまで、歴史のなかで文明がはらむ権力の問題を扱ってきた作家が、ここに存在する看板の意味を問いかける。「大地の芸術祭」WEBより)

 

 日本の田園風景に溶け込むのに黒い雄牛がぴったりと言いますが……異郷の地、温泉の麓で、これから雄牛に新たな文脈が生まれるかもしれません。

 

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