平行する時間:マドリード、2019年とスペイン内戦

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叛乱軍から奪った武器を手に取る共和国派の民兵たち
©ESPAÑA. MINISTERIO DE CULTURA.

 

たしかに、スペイン内戦は、正規軍のクーデターと、労働者たちや市井の民衆の対立として始まった。しかし、やがてヨーロッパ全域を席巻した1930年代の百花繚乱のイデオロギーが、たちまち内戦にも大きな影を落とす。両陣営の間ではむろんのこと、時には同じ運営においても非寛容な流血の闘争を繰り広げられ、スペイン全土がついに焦土と化したのだった。

(『スペイン内戦(一九三六〜一九三九)と現在』ぱる出版, 2018年, p.6 / 川成洋「はじめに」)

 

破壊されたマドリードのプレシアス通り
©ESPAÑA. MINISTERIO DE CULTURA.

 

 イベリア半島に巨大な爪痕を残したスペイン内戦。血で血を洗う同胞殺し、大勢の罪なき市民が銃弾や爆撃に倒れ、果てはピカソに《ゲルニカ》(1937)を描かせた災厄。その勃発から80年以上が経った今、現代の視点からスペイン内戦を見つめる重要性が唱えられています。昨年ぱる出版から刊行された大著『スペイン内戦(一九三六〜一九三九)と現在』はそうした中で編纂され、日本人、スペイン人のみならず各国の研究者が参加し結実した、全5章64篇、800ページ以上のスペイン内戦の専門書です。『acueducto』vol.35では筆頭著者の川成洋先生直々に、本著の紹介文をお寄せいただいています。

 

『スペイン内戦(一九三六〜三九)と現在』

 

 内戦の写真は、飛び交う銃弾の下で命を賭けてシャッターを切り続けた多くの写真家たちの手により残されたもの。2017年には、明石書店から吉岡栄二郎著『評伝 キャパ その生涯と『崩れ落ちる兵士』の真実』が出版され、ロバート・キャパとゲルダ・タローが撮影したかの有名な写真『崩れ落ちる兵士』の撮影時の状況が語られています。けれども貴重な戦争写真を残したのは彼らだけではありません。2016年11月に発行した『acueducto』vol.27のスペイン内戦特集では、多数の写真を本誌に掲載していますがキャパの写真は1枚も含まれていません。それでも当時の緊迫した様子や蜂起する人々、爆撃により荒廃した街並が鮮明に写し出されています。

 

スペイン内戦とは何だったのか

 

 さて、今スペイン本国ではSebastian Mahargという人が現代のスペインの街並と内戦当時の写真をモンタージュするという活動を行なっています。Mahargはシカゴ出身ですがスコットランド人の父とスペイン人の母を持ち、母方の祖母を内戦で亡くしています。2002年からスペインに移住した彼は、2015年にスペインの2つのメディア『El País』と『Yorokobu』にスペインの市街地(Google ストリートビュー)と内戦当時の同じ地点の写真のモンタージュを発表。そして今、彼自身のサイトで Pasado en paralelo(平行する過去)という題で50枚以上に上る一連のモンタージュ作品を公開しています。

 

sebastianmaharg | GALLERY

Pasado en paralelo. Fotografía montajes de la guerra civil española. Spanish Civil War montage photography.

 

 軒先にカフェやショップが並んで賑わう現代の大通りに蘇る、かつての場所の記憶。トラックに乗り込んで発起する大勢の女性たち、生々しい銃創の残る壁、大人の真似をして行進する子供たち、プロパガンダの巨大看板、爆撃で犠牲になった市民……80年前にそこで何があったのか、何が起こっていたのか──遠い日本に住む私たちも見つめることができます。過去と今の時間の交差が非常に巧みに、自然に為されています。マドリードのインスティトゥト・セルバンテスの建物(今)の前に落ちている不発弾(過去)や、スワロフスキーの看板(今)下の入口に積み上げられた土嚢袋(過去)、「VIVA LA U.R.S.S」という垂れ幕の下がったアルカラ門(過去)、トレド通りで信号待ちをしている日焼けした観光客(今)の左を駆けるピストルを持った少女(過去)。

 

“Como a muchos españoles, la Guerra Civil me toca de cerca. Mi abuelo materno luchó en el bando nacional y murió en combate a finales de enero de 1939. Hace justo 80 años. Mi interés nace también por el desinterés que hay por el conflicto”
「多くのスペイン人と同様、スペイン内戦は僕の身近にある。母方の祖母は共和国派の一員として闘い、1939年1月末の争いで命を落とした。ちょうど80年が経った。僕の関心は葛藤から生じるのと同じくらい、無関心からも生じる」

『El Pais Verne』記事から引用)

 

El Madrid de la Guerra Civil se mezcla con el de 2019 en estas fotografías

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 プエルタ・デル・ソル、グラン・ビア、マヨール広場、こうした大勢の人々が行き交うマドリードの主要スポットが、かつてどんな姿をしていたのか皆さんも見つめてみてください。またスペイン内戦の関連書はこれまでに川成先生が多数出版されています。中でも最初に紹介したぱる出版の大著は内戦の政治的諸相や重大事件から国際義勇兵たちの行動、内戦をテーマとする映画、文学、思想など幅広く網羅しています。

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